門田隆将オフィシャルサイト | kadotaryusho.com

  • 最新情報
  • プロフィール
  • 著作リスト
  • 講演のご依頼
  • ブログ
(C) KADOTA RYUSHO. ALL RIGHTS RESERVED.
BLOG | KADOTARYUSHO.COM

ブログ

“復興需要”ではなく“負のスパイラル”へ

2011.04.16

日本が果てしない“負のスパイラル”へ向かっていることが、ほぼ確実になってきた。大震災からの復興に対する莫大な費用を、逆に企業の活性化や雇用の増進へとつなぐことが、危機をチャンスに変える日本経済の大きな鍵だった。

もともと日本は、国の借金が累計で1000兆円を超え、国民一人あたりの借金が700万円近くに達する国である。税収の4分の1がその借金の利息で消える国だ。これを経済復興、すなわちマイナスではなくプラスの方にどう向かわせるかが重要なポイントだったのである。

しかし、国民の生命を瓦礫の下から救いだせなかった菅政権に、そもそもそんな高尚なことを期待しても、無理だったのだろう。今や復興経済への夢は閉ざされたという観が強い。

その原因として、菅政権のみならず、さまざまな政治家や政党から、経済縮小への道が指し示されていることが挙げられる。一例を挙げれば、いま話題となっている自動販売機の撤去論議である。石原都知事や民主党都連などから、消費電力を少しでも減らすために、「自動販売機などやめちまえ」の声が上がっているのだ。

石原都知事の言を借りれば、「こんなに自動販売機がある都市は世界にどこにもない」ということになる。たしかに、それはそうだろうと思う。東京以上に夜、女性が安全、かつ自由に歩ける街は、世界中どこを探してもない。

たとえ夜中であろうと通りには自動販売機の灯りがあり、飲み物がある。無駄な電気消費と言われようが、これは東京(日本の各都市という意味でもいい)でしか「できないもの」なのである。

言うまでもなく、この自動販売機で生計を成り立てている人は少なくない。自販機業界や飲料業界、あるいは場所を貸すことによって収入を得ている一般国民らがそうだ。彼らの生計は、世界一安全な都市「東京」という特性の上に成り立っているのである。

その意味で「こんなに自動販売機がある都市は世界にどこにもない」という石原発言はまったく“正しい”し、それは言い換えれば「東京ほど自動販売機が安心して置ける街は、世界中にほかにない」ということでもあるだろう。

自販機が成り立つ大きな理由のひとつに日本人のモラルと秩序を重んじる国民性も考えられる。たとえば自販機でも置こうものならすぐにバールでこじ開けられ、カネを盗られてしまう都市は多く、そもそも外国では自販機そのものが「成り立たない」のである。

私が1982年に初めて中国へ行った時、北京の街角に置かれている公衆電話がすべて壊されているのを見て驚いたことがある。向こうではカネの入ったものは、こじ開けられて中のカネを盗まれる方が“常識”なのだ。

モラルを重んじる日本人の中でしか通用しない業界、それが自販機業界だろうと思う。しかし、その自販機までこの大震災の電力不足のあおりで“撤去”される崖っ淵に立たされたのである。自販機がターゲットになれば、次は、街の広告塔や看板が電気を灯すこともいけなくなり、それは果てしなく“負のスパイラル”に進んでいくことになる。そんなことで日本経済は復興できるのだろうか、と正直、思う。

ほかにも最近、おかしいと感じるものがある。「買いだめはやめよう」という広告やわけ知り顔の評論家たちのご意見である。私はこれにも首を傾げている一人だ。

「買いだめはやめよう」というのは簡単だが、今回の大震災を目の当たりにして、よくそんな綺麗事が言えるものだと、正直思ってしまうのである。

今回、これまでのブログでも書き続けた通り、国は国民の命を救えなかった。72時間以内に瓦礫の下から国民の命を救い出せなかったばかりか、津波で沖に流されていった人々の命も救うことができなかった。それどころか、やっとの思いで避難所に身を寄せた被災者たちに、何週間も、水も医薬品も食糧も供給することができなかった。

つまり国は、「国民のために何もできなかった」のである。最初の3日間(72時間)を自分たちの力で生き抜けばなんとかなる、というサバイバルの鉄則は見事に裏切られ、国はそれを過ぎても決して「国民を救えない」ことが証明されたのである。

国がそんなお粗末な実態を満天下に晒しておきながら、「買いだめはやめよう」などと言っていること自体を滑稽に思うのは私だけだろうか。「買いだめはやめよう」というのは、「買いだめをしなくても大丈夫。国民の命は国が守ります」という前提があってこそ、初めて成り立つものだからである。

本末転倒のスローガンが罷り通り、“なんでも自粛”の負のスパイラルはだんだんと勢いを増している。復興需要へ向かうどころか、底なしの泥沼に日本は陥ってきたのである。この負のスパイラルで真っ先に影響を受けるのは、雇用だ。そして新卒者の就職率も目に見えて下落していくことになるだろう。

日本は復興需要をチャンスにするどころか、縮小経済に向かって凄まじい勢いで落ち込んでいるのである。世界に冠たる経済大国が、福島原発の事故を5週間が経過しても「抑え込むこともできない」というお粗末な事実と共に、ただただ唖然とする事態が目の前で進行している。

カテゴリ: 政治, 経済