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襟を正せ「全柔連」「相撲協会」

2013.03.28

柔道と相撲――日本を代表する2つの武道を率いる巨大組織の存在意義が問われている。26日に開かれた全日本柔道連盟(全柔連)の臨時理事会と評議員会で、上村春樹会長(62)は“予想通り”辞任しなかった。

いや、それどころか、外部有識者による第三者委員会を設置することを決定し、上村氏本人が、その第三者委の提言を具体化するための「改革・改善実行プロジェクト」のプロジェクト長に就任したそうだ。

「はあ?」と、わが耳を疑った人は少なくないだろう。日本スポーツ振興センター(JSC)からの助成金を理事が不正に受給していた問題や女子柔道の暴力・暴言問題等々、すべての責任がある上村氏が、よりによって、その「改革・改善実行プロジェクト」を実施する責任者として今後も「君臨する」というのである。

最大の責任者である上村氏が地位に恋々として「開き直る」ことができるのが、柔道の世界のようだ。私は、今後、日本の柔道がいかに「道理」を説いても、もはや世界から笑いものにされるだけだろう、と思う。

いつから日本の柔道というのはこんな世界になってしまったのだろうか。そして、上村という人物は、なぜここまで出処進退をわきまえない人物となってしまったのだろうか。

昨年のロンドン五輪の男子柔道の大敗(金メダルゼロ)を受けても、当初、篠原監督を続投させたが、世間の非難が集まるや一転、辞任させたのも上村氏だ。

その後の女子柔道の暴力・暴言問題の告発も「隠蔽」に見事に失敗した。実績や指導力の欠如した明治大学柔道部の後輩・園田隆二監督を当初、庇(かば)ったが、ことが表面化して庇いきれないとみるや、これまた一転、切って捨てたのも上村氏だ。

ついには、JSCの助成金の不正受給問題まで発覚しても、それでも全柔連会長の地位にしがみつき、地方組織だけでなく、自らの足元からも非難の狼煙(のろし)が上がった。

「地位に恋々とする」というのは、「往生際が悪い」という言葉と同義語である。これほどの不祥事に「自らを律することができない人物」が伝統の日本柔道を率いていることを国民はどう見ているだろうか。

私は、「道」を踏み外した日本の柔道は、もとの「柔術」に戻ればいいと思う。「道」を目指し、講道館柔道を創設した“柔道の父”嘉納治五郎が説いたのは「自他共栄」だった。

柔術ではなく柔道でなければならないと唱えた嘉納治五郎は、“自分”だけでなく“他人”と共に栄えることを常に心に置け、と弟子たちに語り続けたのだ。それは、我欲を捨てろ、という意味である。

だが、嘉納治五郎から数えて5代目の講道館館長の上村氏は、それと真逆のことをおこなっている。私は、モントリオール五輪の無差別級で優勝候補・ソ連のチョチョシビリと激闘を展開した時の若き日の上村春樹選手の姿を思い出す。

重量級としては小柄だった上村選手があの時、見せた気迫と執念。感動の名勝負の末に難敵を倒した上村選手は、日本人として初めて無差別級を制し、悲願の金メダルを日本にもたらした。

あの頃の上村選手の姿を知る私は、今の上村氏がどうしても信じられない。日本柔道の栄光の時代を選手として体現した人物がなぜこうも変貌したのか。“人を変えてしまう”組織の怖さを私は感じている。

そして、もうひとつは日本相撲協会である。今週の月曜日、2年間にわたって法廷闘争を展開していた元幕内・蒼国来(29)に「幕内力士としての地位」を認める判決が東京地裁で出た。

必死に八百長への潔白を訴え続ける蒼国来という若者に対して、日本相撲協会が「2年以上」も復帰を拒否する“頑なな姿勢”を崩していないことに憤りを感じる。

というのも、2011年6月8日、東京地裁でおこなわれた蒼国来の地位保全の仮処分申請の第3回審尋で、すでに問題は「決着していた」はずなのである。

すでにその時点で、八百長に絡んで「なんの証拠もないこと」が露呈され、日本相撲協会が蒼国来に対して「毎月、幕内力士としての給料全額130万9,000円を支払う」という裁判所の暫定的な和解案を受け入れ、蒼国来に給料を全額支払うことになっていた。

すでにその時点から「2年近く」が経過している。蒼国来が八百長相撲をおこなったという「証拠」も「カネ」もいっさい存在せず、そのことをすでに2年前に裁判所が和解勧告という形で相撲協会に示し、それを協会が受け入れていながら、それでも、蒼国来の復帰は実行されなかったのである。

しかし、今週月曜日、東京地裁は、蒼国来に対して「あなたの地位は幕内力士である」と明確に判決として示した。なんの証拠もないまま、杜撰な調査で相撲協会が蒼国来を八百長力士に仕立て上げていたことを東京地裁は認定したのである。

2年前、相撲協会は、春場所(3月場所)を中止とし、5月場所を「技量審査場所」として無料公開し、名古屋場所(7月場所)の開催とNHKの中継再開に必死でこぎつけようとしていた。

その中で、八百長にかかわる杜撰な調査が明らかになることを恐れ、蒼国来を復帰させることなく、そのまま“棚ざらし”にしていたのである。一方、弟子が八百長問題に関与していたことで協会の理事からも降格されていた北の湖親方は、昨年、相撲協会理事長に復帰した。

北の湖理事長は、大相撲の八百長疑惑を10週連続で報じた講談社の「週刊現代」を相手取って、協会と力士32人と共に、名誉毀損による損害賠償計約8億円を求める訴えを起こし、2008年には証人出廷して、「八百長は存在しない」という証言をおこない、講談社から約755万円の賠償金を受け取った人物だ。

講談社側が八百長問題発覚後、北の湖理事長ら5人を詐欺罪で警視庁捜査2課に刑事告訴する騒動にまで発展したことは記憶に新しい。そんな人物が理事長に復帰し、一方、無実の蒼国来は2年以上にわたって、そのままの状態に置かれているのである。

私は、以前のブログで、相撲協会はさまざまな特典を享受している現在の「財団法人」という地位を返上し、私企業として出直すのがまず改革の「第一歩」ではないだろうか、と書いた。

その気持ちは今も変わらない。少なくとも、一刻も早い蒼国来の現役復帰を許し、自ら襟(えり)を正して欲しいと思う。日本の武道を代表するふたつの組織の情けない姿に、両方の分野でノンフィクションを数多く手掛けている私は、なんとも寂しくてならない。

カテゴリ: 柔道, 相撲

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