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北朝鮮拉致問題と横田夫妻

2014.03.18

どれほど「長かった」だろうか。横田滋(81)、早紀江(78)さん夫妻が、孫であるキム・ウンギョンさん(26)との面会を果たした17日の記者会見を見て、私は、この夫妻の辛抱と忍耐の凄さをあらためて思い知らされた。

2002年9月、電撃訪朝を実現した当時の小泉首相は、金正日との初の日朝首脳会談をおこない、「日朝平壌宣言」に調印した。金正日は日本人拉致を正式に認め、拉致した日本人のうち「5人が生存、8人が死亡」とした。そして、生存者5人の帰国が実現した。

「死亡した」とされためぐみさんには、15歳になる子供のウンギョン(当時は、「ヘギョン」とされていた)がいることが明らかにされた。しかし、横田夫妻は、あきらめなかった。めぐみさんの不自然極まりない「死亡情報」を認めず、「これで拉致問題は幕引き」とする北朝鮮と真っ向から闘ったのである。

苛立った北朝鮮は、翌月の2002年10月、日本から新聞とテレビ3社を呼び寄せ、「おじいさん、おばあさんに会いたい。どうして私に会いに来てくれないの?」とウンギョンさんに言わせ、揺さぶりをかけた。メディアを通じて、孫に直接呼びかけられた横田夫妻は、すぐにでも飛んでいきたい思いを「堪(こら)えに堪えた」のである。

「もし、会いに行けば、めぐみの死を認めることになる」。夫妻の決意は固く、可愛い孫に会いに行くことを我慢する日々がつづいた。めぐみさんの「死」を既成事実化して、日本との「国交正常化」と「巨額の(戦時)補償」を目論んだ北朝鮮の意図は、こうして横田夫妻の忍耐によって頓挫する。

この間の横田夫妻の揺るぎない姿勢に心打たれた日本人は少なくなかったと思う。「拉致問題の決着」をはかる北朝鮮の戦略に乗らず、「めぐみを必ず日本に連れ帰る」「拉致問題の幕引きは許さず、拉致被害者全員の帰国を実現する」という“大義”を忘れることのなかった夫妻の意志の強さには、本当に頭が下がる。

あれから12年近い歳月を経て、やっと実現した孫・ウンギョンさんとの面会。26歳になったウンギョンさんとの待ちに待った面会でも、やはり横田夫妻は毅然とした姿勢を崩さなかった。北朝鮮に出向くことはせず、面会が実現したのは、モンゴルのウランバートルだったのである。

そして、ウンギョンさんと夫、生後10か月の娘(横田夫妻から見れば、ひ孫)との初めての面会で、夢のような数日を過ごした横田夫妻は、「祖父母と孫として会いたいと思ったことが静かに実現した」と喜びを語ると同時に、めぐみさんの安否に関する話は「特になかった」「行く前と変わらず、分からない」とした。

この面会が「拉致事件の決着」ということに利用されることを、横田夫妻は断乎、拒否したのである。どんなことがあっても、めぐみさんの死を認めたととられる恐れのある発言を夫妻は一切、しなかった。

叔父の張成沢を処刑し、中国からも愛想を尽かれつつある金正恩が、日本へのシグナルとして出してきただろう横田夫妻への譲歩。それでも、一歩も譲ろうとしない夫妻の姿勢を日本の政治家たちは学ぶべきだろう。すなわち、どんな揺さぶりがあろうと、彼(か)の国には、「半歩も譲ってはならない」ということである。

私は、北朝鮮拉致問題ほど、うわべだけの正義を振りかざすメディアや政党に打撃を与えた事件はないと思っている。朝鮮労働党と友党関係にあった当時の日本社会党が、拉致問題でなんの力も発揮せず、それどころか兵庫県出身の有本恵子さんのご両親が社会党に相談にいって、逆に朝鮮労働党にその情報が筒抜けになって有本さんの生命が危機に陥ったことがのちに明らかにされた。

痛烈な「家族会」の批判にあって、衆院議長まで務めた日本社会党の元委員長、土井たか子氏が落選し、政界引退を余儀なくされたことも思い出される。また北朝鮮を“地上の楽園”と讃美し、一貫してこの「凍土の共和国」の応援をつづけた戦後ジャーナリズムの欺瞞(ぎまん)も満天下に晒された。

本当に守るべき“人権”、そして、真の意味の“正義”を考える上で、家族会と横田夫妻が果たした役割は実に大きかったと思う。

「夢が実現した奇跡的な日だった。たくさんの人に感謝している」。12年という気の遠くなる我慢の歳月の末に孫との面会を果たした早紀江さんのこの発言は、毅然と生きようとする日本人と、その将来に大きな勇気を与えるに違いない。

そして同時に、北朝鮮がどんなアプローチをかけてこようと「その戦略に乗ってはならない」ことを改めて肝に銘じよと、横田夫妻は私たちに告げているのではないだろうか。

カテゴリ: 北朝鮮

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