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今村復興相「報道」 メディアの呆れた実態

2017.04.06

議論する時に、相手の意見を捻じ曲げたり、歪めたりして自分が主張しやすいように変えるやり方を「ストローマン手法」、あるいは、「わら人形論法」と言う。そのままでは、議論に負ける時に、相手の言っていること自体を変えてしまうのだ。

わら人形や案山子(かかし)は「簡単に倒す」ことができるので、つけられた名称とされ、欧米では最も軽蔑されるディベートの方法でもある。

しかし、日本の新聞やテレビでは、この手法が「日常的に」取り入れられている。当事者の発言内容を意図的な編集で切り取り、歪めてしまうのだ。その上で、発言主を徹底的に攻撃するのである。

今、大きな問題となっている今村雅弘・復興相の発言に対する報道でも、典型的な「ストローマン手法」が用いられている。国民の多くは、今村大臣の激高部分だけをくりかえし見させられて、「なんて横暴な大臣だ」と思い込んでいるだろう。

しかし、実際のやり取りはどうだったのか。意図的な編集をされていないだろうか。そんな観点で問題となった4月4日午前10時からおこなわれた閣議後会見を見てみると、新たな事実に気がつかされる。むしろ、その「一部始終」を見た人は、逆に、今村大臣の方に同情してしまうのではないだろうか。

まず、問題は「自主避難者」の問題であることを頭に置かなければならない。自主避難者とは、政府の避難指示の範囲外から、自主的に県外へ避難した人々のことだ。福島第一原発から遠く離れた会津地方の人もいれば、郡山といった大都市から、自主的に県外へ出て行った人もいる。

その自主避難者への住宅の無償提供が、震災後6年を経て2017年3月末で、福島県が打ち切った。震災後、6年もの長期にわたって「自主的に」避難していた人たちに住宅の無償提供が続いていたこと自体が驚きだが、フリーランスの記者は、このことについて、こう質問している(以下、復興庁ホームページと録画テープの聞き起こしによる)。

(問)福島県外、関東各地からも避難している方もいらっしゃるので、やはり国が率先して責任をとるという対応がなければ、福島県に押しつけるのは絶対に無理だと思うんですけれども、本当にこれから母子家庭なんかで路頭に迷うような家族が出てくると思うんですが、それに対してはどのように責任をとるおつもりでしょうか。
(答)いや、これは、国がどうだこうだというよりも、基本的には、やはり、ご本人が判断をされることなんですよ。それについて、こういった期間についてのいろいろな条件つきで環境づくりをしっかりやっていきましょうということで、そういった住宅の問題も含めて、やっぱり身近にいる福島県民の一番親元である福島県が中心になって寄り添ってやる方がいいだろうと。
 国の役人がね、そのよく福島県の事情も、その人たちの事情もわからない人たちが、国の役人がやったってしようがないでしょう。あるいは、ほかの自治体の人らが……。だから、それは、あくまでやっぱり一番の肝心の福島県にやっていっていただくということが一番いいという風に思っています。それをしっかり国としてもサポートするということで、この図式は当分これでいきたいという風に思っています。
(問)それは大臣ご自身が福島県の内実とか、なぜ帰れないのかという実情を、大臣自身がご存じないからじゃないでしょうか。それを人のせいにするのは、僕は、それは……。
(答)人のせいになんかしてないじゃないですか。誰がそんなことをしたんですか。ご本人が要するに、どうするんだ、ということを言っています。
(問)でも、帰れないですよ、実際に。
(答)えっ。
(問)実際に帰れないから、避難生活をしているわけです。
(答)帰っている人もいるじゃないですか。
(問)帰っている人ももちろんいます。ただ、帰れない人もいらっしゃいます。
(答)それはね、帰っている人だって、いろんな難しい問題を抱えながらも、やっぱり帰ってもらってるんですよ。
(問)福島県だけではありません。栃木からも群馬からも避難されています。
(答)だから、それ……
(問)千葉からも避難されています。
(答)いや、だから……
(問)それについては、どう考えていらっしゃるのか。
(答)それは、それぞれの人が、さっき言ったように判断でやれればいいわけであります。
(問)判断ができないんだから、帰れないから避難生活を続けなければいけない。それは国が責任をとるべきじゃないでしょうか。
(答)いや、だから、国はそういった方たちに、いろんな形で対応しているじゃないですか。現に帰っている人もいるじゃないですか、こうやっていろんな問題をね……。
(問)帰れない人はどうなんでしょう。
(答)えっ。
(問)帰れない人はどうするんでしょうか。
(答)どうするって、それは本人の責任でしょう。本人の判断でしょう。
(問)自己責任ですか。
(答)えっ。
(問)自己責任だと考え……。
(答)それは、基本はそうだと思いますよ。
(問)そうですか。わかりました。国はそういう姿勢なわけですね。責任をとらない、と。
(答)だって、そういう一応の線引きをして、そして、こういうルールでのっとって今まで進んできたわけだから、そこの経過はわかってもらわなきゃいけない。だから、それはさっき、あなたが言われたように、裁判だ何だでもそこのところはやればいいじゃない。またやったじゃないですか。それなりに国の責任もありますねといった。しかし、現実に問題としては、補償の金額だって、ご存じのとおりの状況でしょう。
 だから、そこは、ある程度これらの大災害が起きた後の対応として、国としては、できるだけのことはやったつもりでありますし、まだまだ足りないということがあれば、いま言ったように福島県なり、一番身近に寄り添う人を中心にして、そして、国が支援をするという仕組みでこれはやっていきます。
(問)自主避難の人には、お金は出ていません。
(答)ちょっと待ってください。あなたはどういう意味でこういう、こうやってやるのか知らないけど、そういう風にここは論争の場ではありませんから、後で来てください。そんなことを言うんなら。
(問)責任を持った回答をしてください。
(答)責任持ってやってるじゃないですか。なんていう君は無礼なことを言うんだ。ここは公式の場なんだよ。
(問)そうです。
(答)だから、何だ、無責任だって言うんだよ。
(問)ですから、ちゃんと責任……
(答)撤回しなさい。
(問)撤回しません。
(答)しなさい。出ていきなさい。もう二度と来ないでください、あなたは。

以上である。二人の議論は嚙み合っていない。自主的に避難した人たちに「6年間」も援助をおこない、それが、打ち切られたことに、このフリーランスの記者は異議を唱えている。

「帰れない人はどうするんでしょうか」「栃木からも群馬からも、千葉からも避難されています」「自己責任ですか」「責任を持った回答してください」……等、かなり強引な質問をおこなっている。これに対して、今村大臣は、「本人の責任」であり、「本人の判断」だと答えている。

政府の避難指示の範囲外から「自主的に」避難した人たちに対して、「6年間」も住宅援助してきたこと自体に驚く人もいるのではないだろうか。このフリーランスの記者と自主避難者の論理は、福島は「これからもずっと人の住めない土地」であり、そのために援助が続けられるのは「当然だ」ということにあるのだろう。

しかし、風評被害に苦しむ福島では、懸命な調査によって集められた科学データが、その手の偏見を打ち砕きつつある。福島県内の大半の地域で、放射線量は日本の他のどの地域とも変わりはしないという客観的事実が浮かび上がり、地元紙の福島民友新聞には、毎日の朝刊に、県下286か所での放射線量の測定数値が掲載されている。

だが、福島県内の線量が正常値を示し、復興してくれては困る人たちも現に存在している。それらを「都合の悪い数値」と捉える人もいるのである。いまも、数値的になんの問題もない地域から自主的に避難している人々には、これらの「数値」はどう映っているのだろうか。それらは、「援助を出せ」と迫る根拠を失わせるものであることは間違いない。

この質問の中で、フリーランスの記者は、「群馬」や「栃木」、「千葉」からの避難者に対しても「帰れないから避難生活を続けなければいけない。それは国が責任をとるべきじゃないでしょうか」と質問している。

きっと今村大臣は、「なんで、そんな人まで……」と思ったに違いないが、それでも丁寧に答えている。本来は、会見を仕切る役所の人間が、その時点で質疑をストップさせるのが当然だろう。

もう、大臣とやりとりするような話のレベルではないからだ。しかし、それを怠ったところから、今回の事態が惹起(じゃっき)されたことがわかる。

「群馬」や「栃木」、「千葉」からの避難者に対しても、私たち国民の税金から援助をしなければならないのだろうか。そもそも、なぜ「群馬」や「栃木」、「千葉」から避難しなければならないのか。風評被害に苦しむ福島の人々の姿を知る私には、とても納得することはできない。しかし、日本の新聞は、これらを以下のように報じている。

朝日新聞
〈「切り捨てたい国の本音」 自主避難者ら反発 復興相発言〉(4月6日付)
〈今村復興相 避難への無理解に驚く〉(同日社説)
毎日新聞
〈「自主避難者帰還は自己責任」 復興相発言、野党が批判〉(6日付)
〈復興相発言「悲しい」 自主避難者ら抗議次々〉(同)

まともに報じれば、大臣側に同情が集まる可能性がある。そこで、各メディアは、いつもの「ストローマン手法」を用いて、できるだけ今村大臣への怒りが増幅されるように記事を仕立て上げている。

しかし、そんな日本の新聞やテレビのやり方は、とっくにバレている。ネットでは、フリーランスの記者の質問内容に対して、喧々諤々(けんけんがくがく)の論争が巻き起こっている。新聞が、とても「若者の信頼」を勝ち取ることができないメディアになり果てたことを「再確認」させてくれる出来事だったことは間違いない。

カテゴリ: 原発

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