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「軍事行動か、核廃棄か」いよいよ岐路が迫ってきた

2018.04.29

朝鮮半島情勢が、いよいよ正念場を迎えている。1993年以来の北朝鮮に対する国際社会の相次ぐ失策が挽回され、解決するか否か。ついに、そのことが問われる時がやってきたのである。

27日の文在寅大統領との板門店会談で、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長が核実験場を「5月中に閉鎖」する方針を表明し、米韓の専門家やメディアに公開するため「招待する計画」まで明らかにしていたことがわかった。

さらに、会談の席上、「日本と対話する用意がある」と言明していたことも明らかにされた。29日午前の文在寅―安倍電話会談で伝えられたこれらの“事実”に、思わず私は「ほう」という声をあげてしまった。

5月中か、もしくは6月上旬までにおこなわれるだろう米朝首脳会談、そして、そのあとに予想される日朝首脳会談。いよいよ4半世紀に及ぶ北朝鮮核問題の決着がつくかどうか。私たち日本人の「生命」にかかわる大問題であり、最大の関心を払わざるを得ない。

私は、一連の動きで3つの感慨を抱いている。1つめは、金正恩の評価に対する国際社会の激変について、である。板門店会談の最大のサプライズは、なんといっても金正恩氏が「パラノイア」ではなく、「したたかな戦略家」であることが映像と生の声を通じて世界に認識されたことだろう。

幹部の相次ぐ粛清、叔父・張成沢の処刑、兄・金正男の暗殺、人民への残虐な仕打ち、核とミサイル実験の折々で発してきた常軌を逸した言葉の数々……私たちが知っている多くの現実は、「金正恩はパラノイア(※Paranoia妄想性パーソナリティ障害の一種)」という疑念を深め、実際にアメリカのヘイリー国連大使は昨年、ABCテレビのインタビューで、「彼はパラノイアの状態だ」と明言したこともあるほどだった。

しかし、文在寅大統領とともに、にこやかに笑う金正恩は、パラノイアどころか、実に巧みな「戦術家」「戦略家」であることを世界に示した。たとえ彼の本音が、昨年のクリスマス休暇以来、いつ断行されてもおかしくなかった米軍による“斬首作戦”への怯(おび)えであったとしても、また、石油の禁輸を含む苛烈な国際社会の経済制裁へのギブアップであったとしても、それをおクビにも出さず、堂々と振る舞ったのである。まさに「パラノイア」から、したたかな「戦略家」へと、自身の国際評価を「一変させた」のだ。

2つめの感慨は、北朝鮮による長年の工作活動の成果について、である。中国も北朝鮮も、多数の工作員(スパイ)を動かし、対象国の政界、経済界、マスコミ……等々を操作・誘導する“工作国家”である。その成果が今回の板門店会談で明らかになったのだ。

すなわち、親北政権である文在寅政権を生み、さらには、“北主導”の朝鮮半島統一への第一歩を「踏み出させた」ことである。

私は、現在の韓国を「文・任政権」と呼んでいる。これは、文在寅大統領と、秘書室長を務める任鐘哲(イムジョンソク)の“二人体制”という意味だ。

これまでインテリジェンスの専門家がくり返し指摘してきたように、任鐘哲秘書室長は、北朝鮮のために韓国国内で地下工作活動を長くおこなってきた経歴を持つ人物だ。そして、今に至るも転向宣言をしたこともなければ、過去を反省するコメントを発したこともない。つまり、任氏は、いまも「北のために」動く人物なのである。

今回、板門店でくり広げられた“スムーズな”南北融和の政治ショーを見て、私は任氏の手腕を再認識させられた。二人の首脳が板門店の南北境界線で握手を交わし、平和の家に移動し、ここであらかじめ詰めていた内容の発表をおこなう。

しかも、その発表では具体的な核廃棄の方法や期限は一切示さず、ただ「平和」「対話」「統一」だけを強調するのである。

そして、具体的なものは、時間をかけて“小出し”にし、国際社会を次第に自分の土俵に引き込み、「抱き込んでいく」のだ。すでに4月20日、平壌でおこなわれた朝鮮労働党中央委員会第7期第3回総会で、金正恩はこれまでの経済建設と核戦力建設の「並進路線」を終了させ、社会主義の経済建設に「総力を集中」させることを打ち出している。

つまり、経済発展に向けて金正恩体制は「突き進む」ということである。おそらく中国のように、共産主義下での特殊な「経済発展」を目指し、国力をアップさせることを目論んでいるのだろう。そして、その戦略の中では、日本の巨額の経済支援をアテにしていることは間違いない。

限界まで危機を煽って恐怖心を噴出させ、そのあと、一転してカネを出させるべく態度を軟化、変貌させる。そのしたたかさは、祖父・金日成、父・金正日以上かもしれない。

3つめの感慨は、ここまで北朝鮮を追い詰めることができた国際社会の一致した経済制裁の威力について、である。ついには石油が枯渇し、洋上で「瀬取り」(※船から船へ積み荷を移すこと)までしなければならないほど、北は土俵際に追い込まれた。

ブッシュ大統領が2002年1月、一般教書演説で、北朝鮮、イラン、イラクの3か国を名指しで批判した際、アメリカ人の多くは北朝鮮が「どこにあるのか」さえ知らなかった。

しかし、今は違う。ふつうのアメリカ人が朝鮮半島問題の大きさを知り、金正恩の存在を知っている。そして「この問題は放置してはならない」という認識を大多数のアメリカ人が持っている。

その「変化」の中心で大きな役割を果たしたのは、日本である。北朝鮮の非道を国際社会に訴え、トランプ大統領の尻を叩き、経済制裁を継続させている「安倍外交」がついに事態打開の可能性を生み出したのである。

フジテレビの報道によれば、先週おこなわれた日米首脳会談で、アメリカ側の出席者が「米朝首脳会談が決裂すれば、軍事攻撃に踏み切るしかない」という見解を日本側に伝えていたという。これは極めて大きな意味を持っている。

圧力は最後までかけ続けるという方針は今後も変わらないということである。トランプ―安倍コンビは、来たるべき「米朝首脳会談」が決裂すれば、「即、軍事オプションに入るぞ」という激烈な圧力の方針を確認し合ったということである。

すでに就任前に「3回」も極秘訪朝したというマイク・ポンぺオ国務長官。ジョン・ボルトン大統領補佐官と共に、北朝鮮最強硬派のポンぺオ氏は、「情報機関(すなわちCIA)による核査察」をおこない、「短期間」に廃棄を実現させ、さらには完全なる核廃棄が確認されない限り「見返りはない」という“リビア方式”での核廃棄プランを持って金正恩と交渉していると囁かれている。

すなわち、これが受け入れられなければ、米軍による「軍事オプション発動」の可能性は、実際に高まるのである。脅しというのは、本気であればあるほど、相手の「譲歩が引き出せる」のは世の習いだ。

北朝鮮情勢は今、まさにその段階にある。北朝鮮は核施設を温存させる方法をあの手この手で探るだろう。一方、アメリカはそれを許さず、軍事衛星その他のあらゆる手段を通じて、核施設割り出しを展開している。

そして、この圧力戦略によって、ついに拉致問題での急展開もあり得る情勢となってきたのである。夏までに「日朝首脳会談」まで至るとなれば、最重要課題である拉致問題はもちろん、経済協力という名のもとに北への巨額のODA(政府開発援助)も取り沙汰されることになる。そうなれば、日本得意の“ヒモつきODA”で、商社、ゼネコン、鉄鋼各社も必死の動きを見せるだろう。

日本を射程に収めた北のスカッド、ノドンおよそ1300発の問題をそのままにして、議論は進んでいくのだろうか。それとも「核」だけでなく、そこまで踏み込んだ話し合いに持っていくことができるのか。

あまりに多くの課題があり、これからが日本外交の正念場なのだ。審議拒否をつづけるドリーマー(お花畑)の野党に国会質問などしてもらう必要もないので、野党はいつまでも“審議拒否”をしていればいいだろうと思う。

ここへ来ても、まだ「安全保障法制の廃止」を宣(のたま)う野党党首もいる。政府には、彼ら野党を完全無視の上、国民の生命を守る「賢明な選択」を是非、お願いしたい。

カテゴリ: 北朝鮮, 政治

国民の「命」に対する“真の敵”は誰か

2018.03.29

私は、1年以上つづく「森友騒動」を見ながら、私たち国民の「命」に対する“真の敵”は誰か、ということを考えている。それは、「野党とマスコミではないか」と感じている。

私は、かねて日本が“DR戦争”の真っ只中にある、と指摘してきた。Dとはドリーマー、夢見る人の意味だ。事実を見ずに、観念論で物事を判断する人たちである。Rはリアリスト、いわゆる現実主義者だ。観念論を排し、事実を見て、それをもとに判断する人たちである。

今でも、日本が「左右対立」の時代である、と勘違いしている人がいる。しかし、今どき共産主義や社会主義、すなわち「全体主義国家」を志向する人が日本に多いとは思えない。ただ、昔、そういう方向にシンパシーを感じていた人々は、事実に背を向け、観念論に閉じこもる傾向が強い。だから、彼らは、往々にして「空想的平和主義」に陥る。

一方、リアリストは、あくまで現実を直視する。空想的平和主義には陥らず、現実的平和主義者となる。このリアリストたちを「保守」だと勘違いしている人もいるが、これもまったく間違っている。保守ではなく、現実直視のリアリストなのだ。

すべての世代で最大のリアリストは若年層である。就職、結婚、子育て……等々を「これから」おこなう若者は、いやでも現実主義者とならざるを得ない。彼らは、ネット世代でもある。情報源を新聞やテレビには、決して頼らない。

昨年、早稲田大学政治経済研究所と読売新聞との共同調査で興味深いことが判明した。若者は、新たな挑戦をおこなっている自民党や維新の会を「リベラル」と見ており、旧来の殻をいつまで経っても破れない共産党や公明党のことを「保守」だと見ていることである。

当ブログでも以前、紹介させてもらったが、私は目から鱗(うろこ)の思いで、その記事を読んだ。その意味では、森友問題ほど“DR戦争”を明確に指し示すものはないだろう、と思う。

それは、インターネットの力を見せつけるものでもある。新聞とテレビしか「情報源」を持たない“情報弱者”と、ネットも情報源にする人との事実認識の「乖離(かいり)」を、森友問題ほど明確に示す事例は、なかなかあるものではない。

リアリストは、新聞やテレビが印象操作という名の“ウソ”を報じていることを知っている。ネットの世界では、森友問題の真実はとっくに「明らか」になっており、そのことが「常識」になっているからだ。

多くの専門家の論評や分析を、ネットを通じて目の当たりにしている人たちには、ウソは通じない。森友騒動の真実は、公開された財務省の改竄(かいざん)前公文書でも、あらためて確認されている。それは、なにか。

この案件が、鴻池祥肇氏による「陳情案件」であることだ。改竄前文書には、「本件は、平成25年8月、鴻池祥肇議員(参・自・兵庫)から近畿局への陳情案件」という但し書きがくり返し登場する。

そう、この案件は、一貫して鴻池氏による「陳情案件」なのである。鴻池氏以外にも、鳩山邦夫、平沼赳夫、北川イッセイという三人の政治家が近畿財務局へ働きかけをおこなっていたことも、改竄前文書には詳細に記述されていた。

しかし、安倍夫妻の関与は出てこない。これだけ政治家からの陳情が詳細に記述されていながら、一切、出てこないのである。あくまで、これは鴻池議員による「陳情案件」であり、産経新聞の報道によれば、鴻池事務所の「陳情整理報告書」に、同年9月9日付で鴻池事務所が籠池氏に「小学校用地の件、先週、財務局より、7~8年賃借後の購入でもOKの方向。本省および大阪府と話し合ってくれる」と伝えたことが記載されている。

さまざまな政治家に働きかけて、鴻池氏以外にも、鳩山邦夫、平沼赳夫、北川イッセイという三人の政治家に動いてもらった籠池氏の“熱意”には恐れ入るばかりだ。

改竄前文書に、安倍昭恵氏が出てくる部分も、籠池氏のいい加減さを示すものとして実に興味深い。籠池氏は近畿財務局に、「いい土地ですから、前に進めてください」と昭恵氏から言われた、と伝えていた。

しかし、昨年3月の証人喚問では、籠池氏は、当該の土地を昭恵氏が「いい田んぼができそうですね」と発言した、と証言していた。「いい土地ですから、前に進めてください」と「いい田んぼができそうですね」とは、天と地ほども違う意味を持つ言葉である。

どんなことをしても土地を値切りたい籠池氏が、勝手に人の名前や言葉を都合よく“改竄”して出していたことが文書であらためて浮き彫りになったのだ。野党とマスコミがタッグを組んで、「8億円値下げは安倍首相がやった」と、いくら叫んでも、そんな事実は「出てこない」のである。

改竄前文書には、籠池氏という特異な人物に、いかに近畿財務局が翻弄されたかが出ている。2016年3月に「新たなゴミが出た」と、それまでのゴミとは別のものが出たと言い出し、「開校に間に合わなかったら、損害賠償訴訟を起こす」とまで恫喝されていた事実には、本当に同情する。「1億3400万円」で売却する契約が締結されたのは、その3か月後の「6月20日」のことである。

この土地の特殊性は、くり返し書いてきたことなので、簡単に記す。当該の土地は、「大阪空港騒音訴訟」の現場であり、どうしても国が手放したかった土地である。伊丹空港の航空進入路の真下で、騒音は大きく、また建物には高さ制限もついているといういわくつきの土地だ。

国は、やっと現われた“買い主”を逃したくなかったし、前述のように鴻池議員「陳情案件」であり、さらに鳩山、平沼、北川という都合4人の政治家が絡んだ案件でもあった。

いま「野田中央公園」になっている隣地は、国が補助金をぶち込んで、実質98・5%もの値下げになっていることでも、この土地の特殊性がわかる。どうしても手放したい国は、買い主に対してあらゆる利便をはかっているのだ。

しかし、そんな事情をすべて知っていながら、新聞やテレビは一切、これを書かないし、伝えない。あり得ない「安倍首相の関与」を1年以上、叫びつづけ、まだ「新たな証人喚問が必要だ」と世論を必死に誘導しているのである。

昨日、たまたまテレビをつけたら、「“アッキード事件”では、まだ籠池さんしか出てきていない。自民党の皆さん、真相究明にはこれからガンガン証人を呼ばないといけないので、逃げないでほしい」と叫んでいる野党議員の声が聞こえてきた。

アッキード事件? 言いも言ったりである。そして、今朝(3月29日)の朝日新聞の記事を見て、私はますます驚いてしまった。

〈日本 置き去り懸念〉と題して、金正恩の想定外の訪中で、日本政府内に「日本だけが取り残されるのではないか」という懸念が浮上していることを報じているのだ。「おいおい、あなたが原因でしょ」とツッコミを入れたい向きは多かったのではないか。

とっくに真相は明らかになっている森友問題が今もつづき、ついには、財務省の虚偽公文書作成事件という思いもかけない事件に発展した。連日の野党からの攻撃で、当時、心身ともに疲労困憊であったことを佐川宣寿・前理財局長は証人喚問で証言した。

そんな中で、あの改竄事件は生じた。佐川局長の指示によるものなのか、それとも、佐川局長の国会答弁を見て、慌てて近畿財務局が改竄したのかは、捜査当局による真相解明を待ちたい。

すでに麻生財務相は、G20財務省・中央銀行総裁会議の欠席を余儀なくされた。安倍首相も、国会対応に大わらわで、ティラーソン国務長官やマクマスター大統領補佐官を解任した“裸の王様”トランプ大統領と共に、金正恩のくり出す作戦に、後手にまわらざるを得なくなっている。

いつも書いていることだが、私は「籠池氏のために、安倍首相が国有財産を8億円も値下げさせた」のが本当なら、一刻も早く総理を辞職して欲しいし、議員も辞めていただきたい。

そして、野党とマスコミには、そのことが真実なら、一刻も早く証明して欲しい。私も、さまざまな取材をし、資料にも当たり、現地も調査したが、安倍夫妻の関与で「8億円の値下げ」があった可能性は「ゼロである」としか思えなかった。

1年以上かけて、野党とマスコミは、この「鴻池議員陳情案件」を安倍首相、あるいは昭恵夫人による案件だと言いつづけてきたのだから、早く立証して欲しいし、できない場合は、これだけの国費の浪費をおこなった「責任」をとっていただきたい。

金正恩の訪中で、もう「過去のもの」とまで言われていた朝鮮戦争以来の中朝の“血の友誼(ゆうぎ)”が、あらためてクローズアップされた。安倍首相は、今こそ日本人の「命」を守るために、あらゆる行動を取らなければならない。

日本を狙うスカッドとノドン、およそ1300発。米朝首脳会談が決裂したら、アメリカによる軍事オプション発動の可能性は高まる。一方で、米朝首脳会談が決裂しなければ、7月には、安倍―金正恩会談、すなわち「日朝首脳会談」が開かれる可能性は極めて高い。

それは、私たちの「命」を守り、また、長年苦しんできた拉致被害者を帰国させる“ラストチャンス”になるかもしれない。

しかし、野党とマスコミだけは、昨日も、今日も、「新たな証人喚問」を求めている。国民の「命」を蔑(ないがし)ろにして、ありもしない“事実”を追って、印象操作を、いまも野党とマスコミは、つづけているのである。国民は彼らの行動と姿勢を絶対に「忘れてはならない」と思う。

ネットの世界では、「いい加減にしろ!」という意見が満ち溢れている。日本のこの国会とマスコミの有り様を見て、笑っている国はどこだ、と私は思う。

野党もマスコミも胸に手をあてて、よく考えた方がいい。改竄前文書を読んで、事実はあらためて確認できたはずである。それでも、本当に安倍首相があの土地の値下げに「関与」したと思っているのか。私も声を大にして言う。もう「いい加減にしろ」と。

カテゴリ: 北朝鮮, 政治

北朝鮮ではなく「日本人が敵」だった

2017.09.04

いよいよ北朝鮮情勢に対するアメリカの「決断の時」が近づきつつある。多くの専門家が「6回目の核実験こそ、戦端が開かれるトリガー(引き金)になる」と、くり返し述べてきたが、その「6回目の核実験」の壁は、あっさりと取り払われた。

9月3日、北朝鮮は6回目の核実験を強行し、朝鮮中央テレビは、「前例がないほどの大きな威力で実施された」と、「水爆実験」の成功を宣言した。

北朝鮮が初めて核実験をおこなったのは、2006年10月である。11年後の今、北朝鮮は、核技術を供与してきたパキスタンをも驚かせる、この分野での目覚ましい発展を遂げたことになる。核と弾道ミサイルの開発を同時に押し進める北朝鮮は、確実にアメリカの「脅威」となったのだ。

前回のブログで、「私たちは、このまま北朝鮮が“核弾頭の小型化”と“起爆装置の開発”が成功することを待つのか」という問題提起をさせてもらった。6回目の核実験で「いよいよか……」という独特の感慨がある。

今から24年前の1993年6月、週刊新潮のデスクをしていた私は、〈東京を睨む北朝鮮核ミサイルに怯える「第九条」〉という記事を書いた(6月24日号)。旧ソ連製の戦術弾道ミサイル・スカッドを北朝鮮が独自に改良・生産した「ノドン1号」が日本海で試射され、500キロ離れた目標物に命中したことが明らかになったことを受けての記事だった。

戦後50年が近づき、“平和ボケ”した日本に突きつけられたこの問題を〈東京を睨む北朝鮮核ミサイルに怯える「第九条」〉と表現した記事は当時、かなりの話題を呼んだ。しかし、今、この記事を読み返すと、これを明日出しても、そのまま通用するのではないか、という錯覚をしてしまう。

それは、“平和ボケ”は今も「まったく変わらない」という点だ。今朝、各紙に目を通していたら、朝日新聞の「天声人語」に目を吸い寄せられた。そこには、こう書かれていた。

〈迷惑千万な隣国への「怒り」は、尽きることがない。それでも「冷静さ」は併せ持ちたい。始めなくていい戦争を始めてしまった経験が、人類にはいくつもある〉

「冷静さ」は、もちろんアメリカを含めて国際社会の側は持っている。持っていないのは、これまで叔父の張成沢氏ばかりか、実兄の金正男氏、さらには、多くの軍の幹部たち、果ては罪のない人民を無惨な方法で処刑・粛清してきた金正恩当人である。

33歳の若きこの領袖が「もはや正気ではない」と各国が分析しているのは周知のことだ。その人物が核ミサイルの発射ボタンを持つことの「意味」を言うまでもなく、トランプ大統領だけでなく、国際社会が認識している。だからこそ、北朝鮮核ミサイル問題は極めて深刻なのである。

しかし、この24年間、父・金正日時代から国際社会の「対話」による解決への模索は、ただ核開発のための「時間稼ぎ」に利用されただけだった。その結果、北朝鮮は、ついに、アメリカの「殲滅」を公言するに至ったのである。

天声人語子は、「対話」の陰で、ついに「起爆装置の開発」が成されたら、それでも同じことを言うのだろうか。2013年4月に労働新聞紙上で宣言した「東京」「横浜」「名古屋」「京都」「大阪」の5都市に向けた核ミサイルの発射ボタンを、いつでも押すことができる状況下で、どんな主張をするのだろうか。

日曜日(9月3日)の朝、民放のテレビを観ていたら、番組の中でジャーナリストが「朝鮮半島の分断には、日本に歴史的な責任がある。朝鮮半島が平和になるために日本が努力しなければならないことを忘れちゃいけない」などと言っていた。北朝鮮の核ミサイル問題も「日本に責任あり」という、お得意の「悪いのはすべて日本」という論である。

また、最近話題になっている東京新聞の女性記者が記者会見で、菅義偉官房長官に「米韓の軍事演習を続けていることが、金委員長のICBM発射を促している。日本は、軍事演習について、(米韓に)金委員長側の要求に応えるよう働きかけをしているんでしょうか?」などと、完全に「北朝鮮の立場」からの質問を浴びせていた。

さすがに、菅官房長官も「北朝鮮の委員長に聞かれたらどうですか?」といなしていたが、「なんでも悪いのは日本」という人たちの発想と論理には恐れ入る。

これまで何度も書いてきたように、日本人は、ほぼ全員が平和を望んでいる。日本は、平和主義者の塊(かたまり)と言える。しかし、その平和主義者は、二つに分かれている。「空想的平和主義者」と「現実的平和主義者」だ。

平和を唱えていれば平和が保たれると思う“ドリーマー(夢見る人)”と、あらゆる現実的手段を執って戦争を防ごうとする“リアリスト(現実を見る人)”である。ドリーマーの特徴は、なんでも「悪いのは日本」で、日本が戦争を起こすのを「どう防ぐか」とばかり考えていることだ。

残念ながら、マスコミには、このドリーマーが非常に多い。彼らは自分たちを“リベラル”と称して、「私たちはペンで戦争をしたい人たちと闘っている」と思い込み、自己陶酔に浸っている。

彼ら彼女らにとっては、「北朝鮮は守らなければならない国」なのである。自然と発想が「北朝鮮寄り」になり、北の利益になるようなことばかり「代弁」するようになる。彼らがいかに北朝鮮の力強い味方だったかがわかる。

彼らは、日本人が「拉致」されるという最大の「主権」と「人権」の侵害に直面しても、決して北朝鮮を糾弾せず、常に「対話」を主張し、「核開発」のための時間稼ぎに大いに力を貸してきた。大多数の日本人にとっては、彼らこそ「敵だった」のである。

それは、この問題が勃発した24年前も、そして「今」も変わらない。かつて北朝鮮を“地上の楽園”と囃(はや)した新聞が、今も脈々とドリーマーを育てつづけていることに、ほとほと感心する。

しかし、事態がここに至り、アメリカのとり得る手段は「2つ」に絞られてきたといっていいだろう。ひとつは、北朝鮮を核保有国とみなして、米朝高官交渉を始めること。もうひとつは、核兵器の除去、つまり、軍事行動で北朝鮮を瓦解せしめることである。

その時は、金正日時代に彼を“斬首”するために立案・計画されていた「作戦計画5026」と「作戦計画5030」が再び甦(よみがえ)ることになるだろう。

在韓アメリカ人の秘かな移動、つまり国外脱出は、どのようなかたちで進行しているのか。それが、明らかになった段階で、世界はアメリカの「決意」を知るに違いない。

「まるでキューバ危機」という声がアメリカ国内にも出始めた。トランプ大統領は、記者から「北朝鮮を攻撃するのか」と問われ、「そのうち分かる(We will see)」と発言した。いよいよ「決断の時」が近づいている。

カテゴリ: マスコミ, 北朝鮮

日本はこのまま「北朝鮮の核ミサイル完成」を待つのか

2017.08.29

本日早朝、北朝鮮の中距離弾道ミサイルが、警告されていた島根、広島、高知の上空ではなく、北海道上空を通過し、太平洋上に落下した。小野寺五典防衛相は、「中距離弾道ミサイル『火星12』の可能性がある」と記者団に述べた。

これまで、北朝鮮が予告の上で「人工衛星である」と称して発射した飛行体が日本列島を通過したことはあったが、ついに弾道ミサイルが「予告なし」で列島を通り越していったのである。

北海道をはじめ全国各地で、Jアラートと連動したサイレンが鳴り響き、携帯電話やスマートフォン等で「エリアメール」が鳴動した。テレビ画面も一斉に緊急画面に切り替えられた。

「私たちは、このまま北朝鮮の“核ミサイルの完成”を待ちますか?」――私は、そんなことを思いながら、一連の動きを見ていた。

「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意」した私たち日本人にとって、北朝鮮の弾道ミサイルは、本来「あり得ないこと」である。

憲法前文で謳うこの理想は、人類の夢である。だが、「夢」は「夢」であり、「現実」ではない。世界の諸国民が「平和を愛する人々である」という前提がいかに「おめでたい」かは、小学生にでもわかる。

だが、私は、「日本人はこのまま北朝鮮の“核ミサイルの完成”を待ち、座して“死”を待つのだろうか」と本当に思う。当欄でも、私は長くこう書いてきた。「北朝鮮が核弾頭の小型化と起爆装置の開発を果たすまでが、日本人が生存できるリミットである」と。

多くの研究者が、「もはや北朝鮮は核弾頭の小型化を実現している」という中、あとは「起爆装置の開発」ができているかどうか、である。

言うまでもなく「核弾頭の小型化と起爆装置の開発」の成功は、「核ミサイルの完成」を表わす。その瞬間から、日本人は、「いつ、理不尽に、自分の命が失われるかわからない状況下に立つ」ことになる。

日本人は忘れやすいのであらためて記すと、北朝鮮はすでに、2013年4月、朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」に〈わが国に対する敵対政策は日本の滅亡を招く〉という記事を掲載(4月10日付)している。

その中で、〈日本は我々の報復対象から逃れることはできない〉とし、攻撃対象として〈東京、大阪、横浜、名古屋、京都〉の「5都市」を挙げている。

記事はかなり詳細で、これらの5都市が日本の人口の「3分の1」近くを占めていることを理由に、〈われわれは、日本の戦争持続力を一気に壊滅させることができる。日本列島のすべてをわれわれは戦場とするだろう〉と主張していた。

この「宣言」は核ミサイルを前提にしている。そして今、いよいよその完成が「間近」となったのである。

私は、テレビで評論家の話を聞きながら、「なぜ、ここまで危機感がないのか」と思う。まだ「起爆装置の開発ができていない」今だからこそ、日本は「生存」できている。なにも起こらないで欲しい、と思っても、もはやそんな悠長なことを言っていられる場合ではない。

もし、北朝鮮が「すべての開発」を終了させたら、日本はどうするのだろうか。そんなことをなぜ議論しないのだろうか。そして、今回のミサイルを「なぜ、撃ち落さなかったのか」、それは、ひょっとして「撃ち落せなかったのか」、それとも完全にミサイルの航跡を把握しながら「撃ち落す必要はない」と判断したのか、そして、もしそうなら、なぜそう判断したのだろうか。議論すべきことは数多くある。

なかでも日本が今、議論すべきは、アメリカに「北朝鮮の無力化」をどう果たしてもらうか、ということではないだろうか。その具体策をどうするか、それを政府に先んじてマスコミは議論していかなければならない。

加計問題で、ファクトに基づかない一方的で煽情的な報道をつづけた日本のマスコミ。「国民の生命と財産を守る」ということに対するマスコミの意識の低さと危機感の欠如に、私は、ただ溜息が出るだけである。

カテゴリ: マスコミ, 北朝鮮

顕在化する東アジア「二つの脅威」

2015.04.24

昨日から今日にかけて、東アジアにおける“二つの脅威”をしみじみ考えさせられる記事を読んだ。このままで、「東アジアは大丈夫か」、そして「日本は存立できるのか」ということを大袈裟ではなく真剣に考えざるを得ない記事である。

一つは、昨日(4月23日付)の毎日新聞朝刊に掲載された同紙の金子秀敏・客員編集委員による〈砂の長城のコスト〉と題するコラムである。

今月上旬、世界に衝撃を与えたハリー・ハリス米太平洋艦隊司令官による「中国が南シナ海に“砂の万里の長城”を築いている」という発言を捉え、この問題を掘り下げたコラムだ。

中国が南シナ海の南沙諸島で七つのサンゴ礁を埋め立て、軍事基地と思われるものを猛烈な勢いで建設しているという暴露は2週間ほど前、世界に驚愕をもたらした。アメリカが公表した衛星写真とハリス司令官の発言によるものである。

それは、いわば“海の万里の長城”とも言えるもので、埋め立てには「砂」が用いられているため、ハリス司令官は、これを“砂の万里の長城”と表現したのである。金子記者のコラムは、この問題を実に明快に解説してくれた。

〈中国が南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島で七つのサンゴ礁を埋め立てている。それを米国の太平洋艦隊司令官は「砂で万里の長城を作っている」と評した。なかなか意味深い〉。そう始まるコラムは、中国の作業の模様をこう表現する。

7つの岩礁の中の「美済(ミスチーフ)礁」では、〈ポンプ船が海底の砂を吸い上げ、「C」形の環礁の内側にまいている。その衛星写真が発表された。この環礁は満潮時に海面下に隠れて暗礁になる。国連海洋法条約では領土主張ができないが、それを埋めて「古来、暗礁ではなかった」と言うつもりだろうか。工事は2013年9月に始まり、軍艦がポンプ船を護衛している〉

また、〈永暑(ファイアリークロス)礁は3000メートル級の飛行場を造ろうという勢いだ。海底の砂を吸い上げていては間に合わない。約800キロ離れた中国大陸から土砂を続々と運んでいる。中国から海軍司令官が視察に来ているから、これも軍の作戦に違いない〉。猛烈な勢いで進む中国の軍事拠点化について、コラムは、こう指摘する。

台湾紙の分析を引いて、そこにかける中国の費用について、コラムはこう書き進む。〈このサンゴ礁を海面から3メートルの高さまで埋め立てるには6億1100万立方メートルの土砂を必要とし、飛行場完成までに必要な総経費は日本円に換算しておよそ1兆4000億円〉

領有を争っている地に強引に軍艦の護衛つきで、これほどの巨費を投じて、堂々と“陸地化”が進んでいるのである。まさに国際社会が中国に対して懸念表明してきた「力による現状変更」にほかならない。

このコラムを読みながら、私は、昨年5月の「アジア安全保障会議」での出来事を思い出した。安倍首相が基調講演で「法による南シナ海の安定」を訴えたことに、中国人民解放軍の王冠中・副参謀総長が、「安倍首相は中国を挑発しており、決して受け入れることはできない」と、怒りの会見をおこなったのだ。

しかし、アメリカのヘーゲル国防長官は、同会議でこう発言している。「中国は一方的行動によって(地域を)不安定化させている。中国は、安定した地域の秩序のために貢献するか、それとも、地域の平和と安全保障を危険に晒すか、どちらを選ぶのか」と、痛烈な批判をおこなったのだ。

中国が南シナ海の大半を「自国領である」と主張して地図上に独自に引いた「九段線」が東アジア最大の脅威になっていることは周知の通りだ。この9本の境界線は、「中国の赤い舌」と称され、それによって、強引に「埋め立て」と「軍事拠点化」が進んでいるのである。

金子記者のコラムは、こう続いている。〈永暑礁の飛行場はすでに長さ500メートル、幅53メートルになり、長さ400メートル、幅20メートルの駐機場も完成した。米国の軍事専門家は、発電所や兵舎の建設が終われば、防空ミサイル、レーダーを配備すると見る〉

そして、コラムは、次は南シナ海上空・防空識別圏(ADIZ)設定に進むことを予想した上で、こう締めくくられている。〈南沙が海と空の長城になれば、東シナ海上空で起きた中国戦闘機の異常接近事件が南シナ海でも起きる。米海兵隊のF18戦闘機が台湾に緊急着陸して備えを始めたという見方もうなずける〉と。

領有が争われているサンゴ礁を含む岩礁を、有無を言わせず埋め立て、軍事拠点化することが、現在の国際社会で現に「通用している」のである。そして、その国に、沖縄県知事が出かけていき、李克強首相と会談してわざわざ「沖縄はかつて琉球王国として、中国をはじめ、アジアとの交流の中で栄えてきた歴史がある」などと、発言していることを私たち日本人はどう捉えればいいのだろうか。

中国の強引な手法は、国際社会からの忠告を無視して大戦へと突き進んでいった、かつてのドイツと日本を彷彿(ほうふつ)させるものである。金子記者のコラムは、そのことへの恐怖をかきたてる実に読み応えのあるものだった。

もう一つの記事は、今朝(4月24日)の各紙が報じている北朝鮮の「核弾頭保有」に関するニュースだ。各紙とも、アメリカのウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙が報じた1本の記事を一斉に紹介している。

それは、〈中国の核専門家が、「北朝鮮は、すでに核弾頭20個を保有している」と推計し、来年までにそれを「倍増するために十分な濃縮ウラン製造能力を備えている可能性がある」との見方を示した〉という衝撃的な内容だ。

ウォールストリート・ジャーナル紙によると、この中国の核専門家の見解が、〈アメリカの核専門家に伝えられた〉とのことで、その数字は、〈アメリカでは最近の研究報告で、北朝鮮が保有する核兵器は推計10~16基とみられており、今回の中国の推計はそれを上回る〉という。

記事では、ジョンズ・ホプキンズ大学の米韓研究所が打ち出した「最悪のシナリオ」では、〈2020年までの保有数が最大100基になる〉としていることも、記されている。

あの北朝鮮が〈核弾頭を保有〉し、それが〈2020年までの保有数が最大100基になる〉可能性があるというのである。日本列島全体をゆうに射程に収めるテポドンを持つ北朝鮮が、ついに「核弾頭の開発」に成功したことを私たちは、どう考えればいいのだろうか。

当コラムでも、北朝鮮による「核弾頭の小型化」と「起爆装置の開発」が成功した段階で、日本はその存立にかかわる危機を迎えることを繰り返し、指摘してきた。極めて高度な技術が要求される「起爆装置の開発」が、北朝鮮でどの程度進んでいるかは、記事からは窺い知れない。

しかし、昨日から今日にかけての2つの記事は、戦後、“空想的平和主義”に浸り、平和ボケしてきた私たち日本人に、東アジア情勢に無関心でいてはならないことを冷静に伝えてくれている。

水面下で進む中国による日本の政界やマスコミへの工作を懸念すると共に、中国にモノ申すことをタブーとする“日本に蔓延する風潮”を一刻も早く打破して欲しいと、心から願う。

カテゴリ: 中国, 北朝鮮

永田町で教訓を「生かす者」「殺す者」

2014.10.20

「なんのための改造だったの?」。永田町では、そんな声が飛び交っている。改造前には、辞任が取り沙汰されるような閣僚スキャンダルは出なかったのに、満を持したはずの内閣改造をおこなった直後、次々とスキャンダルが噴き出した。

目玉だった女性閣僚のうち、小渕優子経済産業相と松島みどり法相の二人が「一緒に辞任する」というのだから、大変な事態である。

先週から今週にかけて、辞任劇に至る永田町の動きは興味深かった。選挙区内の祭りで配られた「うちわ」をめぐって松島みどり法相が窮地に追い込まれていくのに対して、最初に追及した民主党の蓮舫議員も、「うちわ」のようなものを「配っていた」と反撃を食らうなど、低レベルな議論が飛び交う様相を呈していたからだ。

さらに週刊新潮の報道から発した小渕優子経済産業相の案件の方は、「呆れてものも言えない」というのが多くの国民の本音ではないだろうか。

いまどき、これほど「露骨」で、しかも「わかりやすい」不明朗な資金処理をやっていたこと自体に国民は驚いたに違いない。今まで問題にならなかったことの方が不思議なぐらいのお粗末な資金処理である。

女性総理候補のトップといってもよかった小渕氏は、大きな打撃を受けた。私は、これまで繰り返されてきた政治資金問題、いわゆる“政治とカネ”の問題で、過去の事件による教訓が「まったく生かされていないこと」に最も驚いた。

記者会見で小渕氏は、「私自身がわからないことが多過ぎる」「信頼するスタッフのもとでおカネの管理をしていただいたが、その監督責任が十分ではなかった」「すべて私が甘かった」と思わず吐露した。

後援会の誰かに“食いもの”にされたのか、あるいは、自分が全く知らないところで“何かが起こっていたのか”――いずれにせよ、小渕氏の政治家としての資質の問題だろう。

過去の教訓を「生かす」か「殺す」か。それで運命が大きく変わってくるのは永田町に限らず、一般社会の常識である。私はその意味で、小渕氏の失態に同情の余地はなく、さらに言えば、この脇の甘さで“国家の領袖”を目指すのは、とても無理だと感じざるを得なかった。

私は、大臣就任時、各メディアのインタビューに対して能面のような表情で答える小渕氏のようすを見て、「あれ?」と思った。小渕氏の人間的な魅力がまったく出ていないように思えたのである。

だんだん自民党内で地歩を固めるにつれ、逆に「表情」を失い、「能面」のようになってしまったのだろうか。失言を恐れて機械的なやりとりになっていったのかもしれないが、もしそうなら、政治家としての限界だろう。ご本人の「実力」と政治的な「地位」、それに周囲の「期待の大きさ」との間に、だんだんと「乖離(かいり)が生じていたのではないか」と推察する。

「二人を任命したのは私であり、責任は私にあります。こうした事態になったことに国民に深くお詫び申し上げます。しかし、政治の遅滞は許されません」と語った安倍首相も悔しさが隠せなかった。まさに「なぜ?」という思いだろう。

私は一方で、永田町の動きの中で過去の教訓を“プラス”にする側のことも印象に残った。ほかならぬ北朝鮮による「拉致被害者家族会」のことだ。

またしても「家族会」によって政府は「交渉とは何か」の基本を教えてもらっているような気がする。先週の10月16日夜、家族会が「安否に関する報告が聞ける段階まで派遣は待つべきだ」とする申入書を政府に提出した。

この申入書は、東京で開かれた集会の中で山谷えり子・拉致問題担当大臣に家族会から直接、手渡された。私も、このニュースに接してハッとした。そして、「さすがだなあ」と唸ってしまった。

「(拉致問題は)完全に決着している」。家族会が重視したのは、今月、ニューヨークで北朝鮮外務省の高官が、この発言をおこなったことだった。このひと言で、「北朝鮮の拉致問題に対する態度が変わりつつある」ことに家族会は気づいたのである。

叔父の張成沢を無惨にも粛清したことにより、頼るべき中国からソッポを向かれた金正恩・朝鮮労働党第一書記は、経済破綻の立て直しを日本からの「巨額の援助」に頼ろうと方針転換した。そこで出てきたのが、拉致被害者の「全面的な再調査」だった。

両国の間で合意されたこの「再調査」は、いかに北朝鮮が追い詰められているか、を表わすものでもあった。しかし、今月のニューヨークでの北朝鮮高官の発言は、家族会にとって「その方針は果たして堅持されているのか」という疑念を生じさせるものだったわけである。

さっそく、「いまピョンヤンにのこのこ出かけていったら、相手のペースに乗せられる」と懸念を持った家族会には、「さすが」というほかない。長年、北朝鮮と対峙している家族会にとっては、北朝鮮の考えることは「手に取るようにわかる」に違いない。

私は「無法国家との交渉とは何か」を家族会が教えてくれているような気がする。いや、「外交とは何か」という根本を教えてくれているのかもしれない。なぜなら、家族会は「調査結果の提出期限」を決め、それが守られない場合は「協議を白紙に戻すことも検討すべきだ」と主張しているからだ。

一刻も早く拉致されている肉親を取り戻したい家族会が、相手のやり方を熟知しているがゆえに、逆に「相手のペースに乗ってはならない」と必死で堪(こら)えているさまが浮かび上がる。

断腸の思いで今回の申入書が出されたことを想像すると胸が痛む。そして、集会で家族会代表の飯塚繁雄さんが語った以下の言葉も印象深かった。

「今、ピョンヤンに行くのは拙速だ。単に“来い”というだけで、日本側が乗り込んでいくのはリスクがある。それでも総理の判断で行くのであれば、担当者1人か2人で行き、情報を“持ち帰るだけ”にしていただきたい」

外交における交渉とは、「力と力」、「駆引きと駆引き」の勝負である。相手の要求通り、北朝鮮に、ただ行けば、相手のペースに乗り、家族会が指摘するように、相手のつくった土俵に上がることになってしまう。

秋から冬に向かえば、北朝鮮は今年も“飢餓の季節”を迎える。「引き伸ばしによる援助の先取り」で人道的支援を勝ち取ろうとする北朝鮮の目論見は、家族会の苦渋の申し入れによって風前の灯になったと言えるだろう。

本日、政府は、日本人拉致被害者の再調査について、伊原純一・外務省アジア大洋州局長ら交渉当事者を訪朝させることを正式決定する方針を固めたが、家族会の申入書によって、伊原局長への安倍首相の指示は、事前とは「決定的に違うもの」になるだろう。

「(拉致問題は)完全に決着している」という北朝鮮の揺さぶりが勝つのか、家族会が言うように「調査結果の提出期限を決め、それが守られない場合は協議を白紙に戻すべき」との主張が勝つのか。

秋が深まり、寒さが増していく中で始まった「北朝鮮」と「家族会」との我慢比べ――正義が勝つことを私は、信じたい。

カテゴリ: 北朝鮮, 政治

北朝鮮拉致問題と横田夫妻

2014.03.18

どれほど「長かった」だろうか。横田滋(81)、早紀江(78)さん夫妻が、孫であるキム・ウンギョンさん(26)との面会を果たした17日の記者会見を見て、私は、この夫妻の辛抱と忍耐の凄さをあらためて思い知らされた。

2002年9月、電撃訪朝を実現した当時の小泉首相は、金正日との初の日朝首脳会談をおこない、「日朝平壌宣言」に調印した。金正日は日本人拉致を正式に認め、拉致した日本人のうち「5人が生存、8人が死亡」とした。そして、生存者5人の帰国が実現した。

「死亡した」とされためぐみさんには、15歳になる子供のウンギョン(当時は、「ヘギョン」とされていた)がいることが明らかにされた。しかし、横田夫妻は、あきらめなかった。めぐみさんの不自然極まりない「死亡情報」を認めず、「これで拉致問題は幕引き」とする北朝鮮と真っ向から闘ったのである。

苛立った北朝鮮は、翌月の2002年10月、日本から新聞とテレビ3社を呼び寄せ、「おじいさん、おばあさんに会いたい。どうして私に会いに来てくれないの?」とウンギョンさんに言わせ、揺さぶりをかけた。メディアを通じて、孫に直接呼びかけられた横田夫妻は、すぐにでも飛んでいきたい思いを「堪(こら)えに堪えた」のである。

「もし、会いに行けば、めぐみの死を認めることになる」。夫妻の決意は固く、可愛い孫に会いに行くことを我慢する日々がつづいた。めぐみさんの「死」を既成事実化して、日本との「国交正常化」と「巨額の(戦時)補償」を目論んだ北朝鮮の意図は、こうして横田夫妻の忍耐によって頓挫する。

この間の横田夫妻の揺るぎない姿勢に心打たれた日本人は少なくなかったと思う。「拉致問題の決着」をはかる北朝鮮の戦略に乗らず、「めぐみを必ず日本に連れ帰る」「拉致問題の幕引きは許さず、拉致被害者全員の帰国を実現する」という“大義”を忘れることのなかった夫妻の意志の強さには、本当に頭が下がる。

あれから12年近い歳月を経て、やっと実現した孫・ウンギョンさんとの面会。26歳になったウンギョンさんとの待ちに待った面会でも、やはり横田夫妻は毅然とした姿勢を崩さなかった。北朝鮮に出向くことはせず、面会が実現したのは、モンゴルのウランバートルだったのである。

そして、ウンギョンさんと夫、生後10か月の娘(横田夫妻から見れば、ひ孫)との初めての面会で、夢のような数日を過ごした横田夫妻は、「祖父母と孫として会いたいと思ったことが静かに実現した」と喜びを語ると同時に、めぐみさんの安否に関する話は「特になかった」「行く前と変わらず、分からない」とした。

この面会が「拉致事件の決着」ということに利用されることを、横田夫妻は断乎、拒否したのである。どんなことがあっても、めぐみさんの死を認めたととられる恐れのある発言を夫妻は一切、しなかった。

叔父の張成沢を処刑し、中国からも愛想を尽かれつつある金正恩が、日本へのシグナルとして出してきただろう横田夫妻への譲歩。それでも、一歩も譲ろうとしない夫妻の姿勢を日本の政治家たちは学ぶべきだろう。すなわち、どんな揺さぶりがあろうと、彼(か)の国には、「半歩も譲ってはならない」ということである。

私は、北朝鮮拉致問題ほど、うわべだけの正義を振りかざすメディアや政党に打撃を与えた事件はないと思っている。朝鮮労働党と友党関係にあった当時の日本社会党が、拉致問題でなんの力も発揮せず、それどころか兵庫県出身の有本恵子さんのご両親が社会党に相談にいって、逆に朝鮮労働党にその情報が筒抜けになって有本さんの生命が危機に陥ったことがのちに明らかにされた。

痛烈な「家族会」の批判にあって、衆院議長まで務めた日本社会党の元委員長、土井たか子氏が落選し、政界引退を余儀なくされたことも思い出される。また北朝鮮を“地上の楽園”と讃美し、一貫してこの「凍土の共和国」の応援をつづけた戦後ジャーナリズムの欺瞞(ぎまん)も満天下に晒された。

本当に守るべき“人権”、そして、真の意味の“正義”を考える上で、家族会と横田夫妻が果たした役割は実に大きかったと思う。

「夢が実現した奇跡的な日だった。たくさんの人に感謝している」。12年という気の遠くなる我慢の歳月の末に孫との面会を果たした早紀江さんのこの発言は、毅然と生きようとする日本人と、その将来に大きな勇気を与えるに違いない。

そして同時に、北朝鮮がどんなアプローチをかけてこようと「その戦略に乗ってはならない」ことを改めて肝に銘じよと、横田夫妻は私たちに告げているのではないだろうか。

カテゴリ: 北朝鮮

北朝鮮「張成沢処刑」が意味するもの

2013.12.13

ついに北朝鮮ナンバー2の張成沢氏が処刑された。12月8日、朝鮮労働党中央委員会の政治局拡大会議で、張氏が「党内で派閥を形成するために悪辣に動いた」という理由によって、すべての職務を解任され、党から除名されることが決定していた。

北朝鮮の各メディアが、名前を呼び捨てにした上で、議場から連行される張氏の写真を報じ、さらに、朝鮮中央テレビが「張成沢は、権力を乱用して、不正・腐敗行為をし、複数の女性と不適切な関係を持って、高級食堂の裏部屋で、飲み食いをしてきた」と激しく弾劾したことで、処刑は「時間の問題」と見られていた。

それでも、叔父である張成沢氏を「本当に処刑できるのか」という観測が内外のメディアにはあった。しかし、有無を言わせず、金正恩は自分の「叔父の命を奪った」のである。

血のつながった叔母である張成沢夫人の金慶喜も、甥(おい)の暴走を止められなかった。いや、彼女自身の動向もわからず、生命自体が危うい状態に置かれていることが予想されている。

私は、この処刑が意味するものは「2つ」あると思う。経済やモラル、秩序……あらゆるものが崩壊している現在の北朝鮮で、絶対的な権力を維持する方法は1つしかない。それは、「恐怖」である。恐怖による支配以外、軍や人民を統率することは不可能だ。

その意味で、今回の張成沢の粛清は「権力基盤の確立」のために大きな力を発揮したと言える。「この男は何をするかわからない。ただ“服従”するしかない」。若造を舐めていた軍の長老や実力者たちも、自分たちの“命の危うさ”を思い知ったに違いない。

なんの実績もなかったこの若き領袖は、うしろ盾である叔父の命を奪ったことで、今後、絶対的な“恐怖の支配者”として、北朝鮮に君臨するだろう。あとは、本人が暗殺の恐怖と闘うだけである。

もう1つは、今回の出来事は、日本にとって意味するものが極めて大きいという点だ。これほどの残虐性を持つ指導者が、「核ミサイルを手に入れた時」にどうなるか、ということである。

繰り返される核実験と、テポドンの発射実験によって、この独裁者が「絶大な力を発揮する核ミサイル」を実際に手に入れる時期が「刻々と近づいている」のである。

これまで何度も当ブログで書いてきたように、核ミサイルの開発には、「核弾頭の小型化」と「起爆装置の開発」が不可欠だ。巨大な核爆弾をミサイルの弾頭にして、何万キロも飛ばすことはできない。

また、小型化がたとえ成功しても、ミサイルが着弾した時に核爆発を起こさなければ核ミサイルの意味はない。その二つの開発が揃って、初めて「核ミサイル」となるのである。

専門家の分析では、繰り返された核実験によって「核弾頭の小型化は成功しているのではないか」と見る向きが多い。

となれば、残りは、「起爆装置の開発」である。高度な技術を結集しなければ核ミサイルの起爆装置開発は不可能だ。これだけは、まだ北朝鮮も「開発に成功していない」と見られている。

だが、それも「時間の問題」だろう。これほどの無慈悲なことをやってのける独裁国家の領袖が、東京をはじめ日本の主要都市に照準を定めた核ミサイルを手に入れた「時」、いったいどうなるだろうか。

私は、今年4月10日に朝鮮労働党の機関紙・労働新聞が「わが国に対する敵視政策が日本にもたらすのは破滅だけだ」と題する論評を発表したことを思い出す。「東京、大阪、横浜、名古屋、京都には、日本の全人口のおよそ3分の1が暮らしている。これは、日本の戦争維持能力が一撃で消滅する可能性を示している。日本が戦争に火をつければ、日本列島全体が戦場に変わるだろう」と、労働新聞は強く主張したのである。

「ソウルを火の海にする」というのは、北朝鮮の常套句だが、この論評を目にした時、「東京、大阪、横浜、名古屋、京都」という日本の主要5都市の名前を北朝鮮が実際に挙げたことで、私は金正恩の本気度を見た思いがした。

言うまでもなく、起爆装置が開発されれば、この5都市に照準を定めた核ミサイルが「準備」されるのだろう。うしろ盾だった叔父ですら、議場から引きずり出して処刑にした独裁者。そんな国と、日本はそのあと、どんな「対話」ができるというのだろうか。

しかし、これに対峙する日本の現状はお寒いかぎりだ。閉幕した国会で法案こそ成立したものの、国家安全保障会議(日本版NSC)はまだ創設されていない。特定秘密保護法案に対して「戦前への回帰だ」と叫ぶ日本の一部勢力を横目に、極東を中心とする世界情勢の現実は、とっくに“危険水域”に入っている。

北朝鮮のうしろ盾が「中国」であるところに、この問題の複雑さと怖さがある。中国の巨大投稿サイトでは、「小日本に核ミサイルをぶち込んで、思い知らせてやれ」という内容の投稿がよく出てくる。しかし、それは、「自分の手を汚さなくても」、この北朝鮮の若き独裁者にやらせれば、「簡単なこと」なのである。

どうしようもない飢餓状態で、この冬が越せるかどうかという状態に陥っている北朝鮮。この冬を乗り切ったとしても、来年、再来年の冬は果たして乗り切れるだろうか。その時、座して「死」を待つぐらいなら……と、金正恩がどんな手段をとるのか、誰にも予測はつかない。

いつまでも韓国の国家情報院の発表を待っているだけのお粗末な日本の北朝鮮情報の収集体制では、せっかく国家安全保障会議をスタートさせても、有益な策は打ち出せないだろう。しっかりした危機感をもとに、国民の生命・財産を守るための情報収集体制の「一刻も早い構築」を望むばかりだ。

カテゴリ: 北朝鮮

「前のめりは禁物」安倍首相

2013.05.20

この1週間、締切に加え、出張が相次ぎ、ブログの更新もままならなかった。著作の関係で、原発問題や太平洋戦争関連の講演をさせてもらっているが、四国、九州への出張がいまも続いている。

その間、橋下徹・大阪市長の従軍慰安婦発言などもあり、講演ではそのことも話をさせてもらっている。貧困が支配していたあの時代、家族を助けるために金銭で身売りを余儀なくされて色街で働き、さらに、軍を相手に独占的に商売する慰安所でも働く薄幸な女性は数多くいた。

それは、日本国内にとどまらず、朝鮮半島をはじめいろいろな地域の出身の女性たちだった。しかし、言うまでもなく日本が国家として「嫌がる婦女子を無理やり拉致して従軍慰安婦にした」ということではない。

にもかかわらず日本が「レイプ国家」といういわれなき批判を受けていることに、「違うことは違うと言わなければならない」と橋下氏は語った。私には、史実に即したまっとうな見解だと思えるが、橋下氏は、それでも内外から激しいバッシングを受けたのである。

いつものように親中・親韓の日本国内の“反日メディア”が憎っくき橋下氏に食らいついたのが今回の騒動だった。詳しくは今月26日発売の月刊「WILL」のコラムに書いたので、それをお読みいただければ、と思う。

さて、今日は突如、明らかにされた飯島勲・内閣参与の訪朝について、少し、考えてみたい。私は、今回の訪朝と今後の動きに、非常に懸念を抱いている。それは、飯島氏の訪朝が明らかになった経緯から自ずと見えてくる。

わずかひと月からふた月前、「敵を一網打尽に破壊せよ」「命令が下り次第、一人残さず敵を火の釜にブチ込め」「日本の東京、大阪、名古屋、横浜、京都が報復の対象になるのは避けられない」……等々、あれほど苛烈な文言を発して私たちを恫喝した国を飯島氏は訪問した。

長距離ミサイルの発射をそこまで具体的に言ってのけた国が、「日本と交渉をする」というのである。もはや国内の飢餓状態が極点に達し、恥も外聞もなく日本からの「援助にすがる」しかない状態であることがわかる。

日本を呼び寄せる北朝鮮のカードは“拉致問題”しかない。そして、飯島氏の空港での出迎えや会談のようすがテレビで放映されるなど、北朝鮮の飯島氏訪問にかけた意欲とメッセージは明らかだった。

実は、今年になってから、与野党を問わず日本の政界に太い人脈を持つ朝鮮総連のドン・許宗萬(ホ・ジョンマン)議長が、盛んに政界工作をかけているという真偽不明の情報が永田町に流れていた。今回の訪朝で、ああ、これがそうだったのか、と思ったジャーナリストも少なくないだろう。

経済破綻している北朝鮮は、外国にいる同胞からの援助が不可欠だが、中でも朝鮮総連は群を抜く援助をおこなってきたことで知られる。だが、長引く経済制裁によって北朝鮮国内への物資の持ち込みを阻止され、そのことが北朝鮮の体制の致命傷になりつつあるのは、周知の通りである。

長距離ミサイル発射という恫喝による援助引き出し作戦も不調に終わった今、拉致問題という唯一とも言える“カード”を握る日本に対して、北朝鮮がアプローチしてくるのは当然だったかもしれない。この問題に最も熱心な政治家であり、拉致被害者家族の期待になんとしても応えたい安倍首相にとっては、それは実に魅力的な誘いだったに違いない。

政治家には、誰にも「功名心」がある。こういう誘いに極めて乗りやすいのが、政治家の「性(さが)」である。しかし、だからこそ、私は懸念する。

2002年の年末、横田滋・早紀江さん夫妻は、横田めぐみさんが生んだことがDNA鑑定で明らかになったキムヘギョンちゃんに「会いに来ないか」という北朝鮮の誘いを断わっている。

横田夫妻は、会いたくてたまらない孫娘に会いにいくことを必死で堪(こら)えた。そこで会いにいったら、北朝鮮が言う「めぐみさんの死」を認めることになるからである。狡猾な北朝鮮の誘いの裏にあるものを考え、土壇場で辛抱し、訪朝を断わったのである。

北朝鮮の究極の目的は、日本との間で国交を正常化し、3兆円とも予想される戦後賠償を勝ち取って、一気に瀬戸際外交に勝利することである。

その前に、さまざまなルートを通じてアプローチし、鼻先に“拉致問題解決”という餌(えさ)をぶら下げてその前段階の“援助”を勝ち取ろうとしている。そこには、「日中韓の分断」という一石二鳥の意味もある。

前のめりは禁物――安倍内閣には、国民の一人としてそう言いたい。なぜなら、やっと国際社会が金正恩たちを瓦解寸前まで追い込んだのである。本当に北朝鮮が瓦解すれば、拉致被害者も姿を現わすだろう。

だが、ここで相手の戦略に嵌(はま)り、日米韓の足並みが乱れれば、すべてが水泡に帰し、崩壊寸前の金正恩体制が息を吹き返すのである。具体的には「制裁の緩和」だ。それは、北朝鮮が核弾頭の小型化と起爆装置の開発に成功するという事態に繋(つな)がり、将来、日本の方が逆に崩壊の危機に立たされる事態を生むことにもなる。

その意味で、11年前に、断腸の思いでヘギョンちゃんに会いにいくことをやめた横田夫妻の辛抱を無にしないで欲しいと思う。安倍首相は、横田夫妻の思いを最も知る政治家だけに、この問題に対して「前のめり」になることだけは自重して欲しい。

カテゴリ: 北朝鮮

暴発の「大義名分」を待つ金正恩

2013.03.12

北朝鮮によれば、「最期の決戦の時」が来たそうだ。昨日から米韓合同軍事演習「キー・リゾルブ」が始まり、事実、北朝鮮は全土で臨戦体制に入っている。

韓国軍1万人、米軍3000人が参加した軍事演習は21日まで続き、「朝鮮戦争休戦協定の完全白紙化」を宣言した北朝鮮との睨み合いがつづく。

果たして、韓国の国防省高官が語るように「吠える犬は咬(か)みつかない」のか、それとも北朝鮮が言うように「侵略者たち」に照準を合わせた「大砲と戦略ロケット」が火を噴くのか、世界の注目が東アジアに集まっている。

いよいよ「何が起こってもおかしくない」状態となったのは事実である。それは、北朝鮮情勢にこれまでとは異なる最大の不確定要素が「存在する」からだ。

今から19年前の1994年3月、板門店で北朝鮮代表が、「戦争が起きればソウルは火の海となる」と宣言して、世界を驚かせたことがある。過剰な脅迫的文言を駆使するのは、北朝鮮の常套手段なので、今回も真に受けるべきことではないのかもしれない。

だが今度は、何の実績もない、わずか30歳の新指導者・金正恩がこの事態を指導していることが「これまでとは異なる」最大の懸念材料だ。

2月12日に3度目の核実験を強行した北朝鮮に対して、国連安全保障理事会が今月8日、追加制裁決議を全会一致で採択し、北朝鮮は「もはや第2の朝鮮戦争を避けるのは難しい」「侵略者たちの本拠地に対して、われわれは核の先制攻撃の権利を行使する」という声明を発する常軌を逸した行動に出た。

北朝鮮の労働新聞は、採択の直前に「われわれは、精密な核攻撃によってソウルだけでなくワシントンまで火の海にするだろう」と威嚇していた。すべては、国連安保理での制裁決議を阻止するための“脅し”だったが、それも無駄に終わった。

核攻撃を示唆して「ソウル」だけでなく、「ワシントン」まで「火の海にする」と言及したにもかかわらず、鼻であしらわれたのである。金正恩は激怒し、軍の兵力を江原道へ移動させて臨戦態勢を敷き、さらには、日本海と黄海に船舶と航空機の「航行禁止区域」を設定したのである。

ここで重要なのは金正恩が持つ「常識」というものである。普通に考えれば、自ら「引き金」を引けば自国の壊滅が見えているだけに「そこまではやらないだろう」と考えるのが大人だ。

だが、1年4か月前の2010年11月、突如、黄海の南北境界水域に近い韓国の延坪島(ヨンビョンド)を砲撃した事件を思い出して欲しい。発射された砲弾170発によって、韓国の海兵隊員2名と民間人2名の計4名が死亡した事件である。

実は、この時も韓国軍による実弾軍事訓練のさなかのことだった。警告にもかかわらず、演習をつづけた韓国軍への報復として「砲弾を発射した」というのが、北朝鮮の言い分だった。

まだ父親である金正日が死去する1年近く前の出来事だったが、この時、労働新聞は「金正恩領導者の非凡な知略と戦術で敵の挑発は挫折した」「延坪島は火の海と化した」と報じ、これが「金正恩の意向」による作戦であったことを示唆した。

何をやるかわからない若者――その時、国際社会が認識した金正恩像は、まさにそれだったのである。金正恩は、実績のない、いわば“お坊ちゃん”指導者だ。「何か」をやらなければ、軍に舐(な)められる立場にある。弱気は自らの立場を「危うくする」のである。

後継者として地歩を固めるために延坪島に「砲弾170発」をぶち込む人物が、実際に全権力を手中にしたあと「何をするか」ということは全く予想がつかない。その行動を「常識で予測・判断することは不可能」ということである。

実際に米韓合同軍事演習が終了する今月21日までに「何が起こるか」わからない。いや、仮に21日が過ぎても、不穏な状態はつづく。

キーワードは「臨検」である。金正恩はあれほどの国際社会の反発の中で、3回目の核実験を強行した。しかし、同時に、安保理による「核実験に対する追加制裁」を異常に恐れていた。嫌なら「核実験」そのものをやめればいいじゃないか、と考えるのが普通だが、彼にはそんな常識は通じなかった。

北朝鮮が恐れたのは、「金融制裁」の強化であり、「臨検」の強化である。安保理は、核とミサイル開発につながる可能性がある場合、加盟国に対し、「一切の金融取引」を禁止し、「現金の持ち運び」も許さず、北朝鮮の銀行の「支店開設」も禁止するという具体的な手段を入れた決定をおこなった。

さらに注目されるのは、禁輸物資の疑いがある貨物に対する検査の義務化を各国に課した点だ。税関での監視と、臨検の強化である。

これは、北朝鮮の“金と物”の出入りがすべて国際的な「監視下」に入ったことを意味しており、水面下でさまざまな手段を通じて外貨や物資を獲得してきた北朝鮮にとって、言うまでもなく死活問題なのである。

これは国家として極めて大きな打撃であり、言いかえれば、このままでは「座して死を待つ」ことになるということだ。

「忍従」や「我慢」というものを知らない若きリーダーが「どうせ崩壊するなら先に」と考えるのは不思議でも何でもない。今回の危機を過ぎても、仮に船舶の貨物検査によって、すなわち「臨検」でトラブルが生じた場合、一体どうなるのか。

私は今、金正恩という若きリーダーが“暴発”の機会、言いかえれば「大義名分」を窺っているような気がしてならない。大人になりきれない子どもが、実際の武器を玩具(おもちゃ)のように扱う事態が、すぐ「そこ」まで来ているのである。

カテゴリ: 北朝鮮

もはや「戦後」ではなく「戦前」なのか

2013.02.18

今日は大阪にいる。明日は徳島だ。講演と取材が重なっているが、ここのところ、話す人、話す人が北朝鮮と中国のことを話題にするのが興味深い。

北朝鮮の3度目の核実験と、中国艦船による日本の海上自衛隊の艦船への射撃管制用レーダー照射事件は、さすがに長い間“平和ボケ”と揶揄(やゆ)されてきた日本人にとっても、大きな衝撃だったのである。

核弾頭搭載の「核ミサイル開発」に着々と歩を進めている北朝鮮と、領土意識を剥き出しに東シナ海と南シナ海で支配権を確立しようとする中国――ついに中国海軍が海上自衛隊の艦船に射撃管制用レーダーを照射してきた事件は、日中の最前線の海域で「何が起こっているか」を国民の前に明らかにした。

3年前、海上保安庁の船に突っ込んできた中国漁船の有り様を録画したビデオを公開しなかった民主党政権とは違い、レーダー照射の事実をいち早く公表した安倍政権。国民のこの関心の高さは、打って変わったその情報公開の姿勢が国民に「受け入れられた」ことを物語っている。

国民が情報を共有し、事態の深刻さを認知するのは、民主主義国家では当たり前のことだが、これまでは、それさえまともに行われてこなかったのである。

領土・領海の最前線で何が行われているかを国民が知ることは、最も公共性の高い情報を主権者である国民が「認知する」ことであり、それをないがしろにしてはならないと思う。

相次ぐ反日デモと、家宅侵入や器物破損、そして各種の凄まじい破壊行為を目の当たりにして、日本人の中国への感情は、著しく変化した。中国との間で、うわべだけの“友好の時代”が終わったことを国民の多くが知るようになった。

それは、譲歩しさえすれば、「友好が保たれる」時代がとうに終わったことを「国民が知った」ということである。これから、安倍政権は国民のその認知度を背景に「是は是、非は非」と、毅然と言ってのける日中関係を構築していくべきだと思う。

それは同時に、尖閣の防空識別圏への戦闘機の侵入や、射撃レーダー照射事件など、露骨な挑発行為を繰り返す中国に対して、武力衝突をどう回避し、あるいは逆にぎりぎりの決断をどうおこなうか、という意味でもある。

今週の週刊誌の見出しには、「宣戦布告」「開戦」「いよいよ激突」……といった派手な見出しが躍っている。何かあれば、「煽り立てる」のも問題だが、逆にこの状態を「当たり前だ」と思ってしまうのも恐ろしい。雰囲気に惑わされてはいけないのである。

もはや「戦後」ではなく、「戦前」に入った、という見方がある。東シナ海で日中衝突の事態を回避できる方法が果たしてあるのか。戦後、周辺諸国との連携が、これほど必要な時代はなかっただろう。

国民一人一人が「覚悟」をもって、そして領土・領海を守るために最前線に立つ人たちを「尊敬」をもって見守っていきたい。

カテゴリ: 中国, 北朝鮮

「飢餓の北朝鮮」と究極の瀬戸際外交

2013.01.31

吉と出るか凶と出るか――。若き指導者にとっては、乾坤一擲(けんこんいってき)の勝負なのだろう。金正恩・朝鮮労働党第一書記が「3回目」の核実験を予告していることについて、さまざまな動きが起こっている。

本日、日米韓の3か国の防衛当局の局長級会合が東京で開かれ、「もし北朝鮮が核実験に踏み切れば、北朝鮮はその“結果”に対して責任を負うことになる」という共同声明が発表されたのもそうだ。

「やれるものなら、やってみろ」と、3か国の防衛当局者が面子をかけて北朝鮮に警告したわけである。だが、金正恩も必死だ。そんな脅しに屈するはずもなく、着々と核実験の準備を進めている。

無謀とも言えるその実験強行の背景を考えるために不可欠なニュースが今週、MSN産経ニュースで流れていた。「飢餓地獄の北朝鮮で人肉食相次ぐ 親が子を釜ゆで 金正恩体制下で大量餓死発生」と題された内部レポートだ。

アジアプレスの石丸次郎氏が率いる取材チームの調べで分かったこととして、北朝鮮の黄海南道と黄海北道で昨春以来、「数万人」規模の餓死者が発生していると報じたのだ。

「数万人規模」という餓死者の数も衝撃なら、私は、その「場所」に驚いた。黄海南道と黄海北道といえば、38度線を境にして韓国と国境を接する地である。つまり、北朝鮮の中では、韓国の繁栄と飽食の町・ソウルから最も近い地方なのである。

石丸氏らは今回キャッチした実態を報告書にまとめて国連に提出するそうだが、その中身は、凄まじいの一語だ。飢餓でおかしくなった親が子を釜ゆでして食べ、捕まったケースや、また親子殺人、人肉密売の実態なども明らかにするという。

長く北朝鮮報道にかかわる石丸氏らの取得した情報は、過酷な北朝鮮人民の姿を映し出している。極めて取材が困難な北朝鮮だけに、クロスチェックなどが容易にはおこなえない事情を加味しても、貴重なものだと思う。

北朝鮮の飢餓の実態を見る時、忘れてはならないキーワードは「軍による収奪」と「人肉食」である。言うまでもないが、北朝鮮の基本は「先軍思想」だ。すべてにおいて軍事が優先され、社会主義建設の主力は朝鮮人民軍である、という揺るぎない思想が北朝鮮にはある。

つまり、本来は、「人民」は飢えても、「軍」が飢えることはない国なのである。だが、その軍が平壌市民への配給用の「首都米」まで強奪し、地方幹部や警察なども人民から組織的に食糧を収奪、さらには、軍を維持するための軍糧米の名目で、収穫前に軍が田畑に入って刈り取ってしまうケースも相次いでいるという。

黄海道では5、6年前から軍による収奪が続いているというから、よほどの事態である。演説等で「人民の生活向上」を宣言していた金正恩にとっては、その地位を危ぶませる極めて深刻なありさまと言える。

昨年来、金正恩を国家の領袖としてデビューさせるために疲弊した人民の姿が思い浮かぶ。だが、金正恩が核実験をチラつかせ、それを土壇場で回避して食糧支援を勝ち取るという目論見は、残念ながら成功の見込みは薄い。

父親(金正日)が何度も使ってきた手法がいつまでも通じるはずはない。当ブログでも以前、書いたように、昨年12月、「射程1万キロ」の長距離弾道ミサイルを発射し、実験を成功させた時から、もはやアメリカは北朝鮮を「許す」はずはないのである。

核実験が終われば、核弾頭の小型化と起爆装置の開発へ「待ったなし」の段階に入る。それが成功した時には、もはやアメリカも含めて世界のどの国も、北朝鮮に「ものを言う」ことはできなくなるのである。その意味で、飢餓状態に対して3か国が「チャンス」と踏んでいることは間違いない。

私は、今日の日米韓の防衛当局の局長級会合の裏で、「何が合意されたか」という点に大いに興味がある。今の状況で、実務者のトップに近い連中が集まれば、3か国で当然、不測の事態に備えた“役まわり”を決めたはずである。

集団的自衛権が行使できない日本は、アメリカの足手まといになるのがせいぜいかもしれない。しかし、それでもなんらかの役割を日本が果たし、北朝鮮が核ミサイルを完成させるまでに“決着”をつけなくてはならないのである。

金正恩が政治の表舞台に顔を出してから1年。いよいよご祝儀相場も終了した今、究極の瀬戸際外交に挑む金正恩の表情と姿が、なぜか寂しそうに、そして自信なさげに見えるのは、私だけだろうか。

カテゴリ: 北朝鮮

“終焉”に向かって踏み出した金正恩体制

2012.12.12

今頃、北朝鮮の若き指導者、金正恩(キム・ジョンウン)はさぞかし愉快に高笑いをしているだろう。韓国の大統領選まで「1週間」、日本の衆院選投開票まであと「4日」となった本日、「射程1万キロ」の長距離弾道ミサイルを発射し、実験を成功させたのだから無理もない。

今年4月に国際記者団を招いて大々的に発射をPRしながら実験に失敗し、大恥をかいてから8か月。強盛大国元年(2012年)も残りわずかになった今日、「ぎりぎり間に合った」のである。しかし、この実験成功は、金正恩体制の終焉に向かってカウントダウンが始まったものと思っていいだろう。

北朝鮮の場合、国家の存続と終焉は実に微妙なバランスの上にある。経済が疲弊し、地方では餓死者があとを絶たない北朝鮮にあって、食糧の確保は体制維持のためには欠かせないものだ。

だが、同時に、すでにあらゆる面で破綻状態にある北朝鮮は、国家として「健在であること」を人民に示しつづける必要もある。すなわち喉から手が出るほど欲しい食糧の援助と共に、たとえば長距離弾道ミサイルの発射に成功するといった“国威”を人民に示さなければならない宿命も背負っているのだ。

その国威発揚のための実験成功は、“敵国”であるアメリカにとって見過ごすことのできないものだ。今日の実験成功が明確に示していることと言えば、それは、北朝鮮の長距離弾道ミサイルの技術が、完全にアメリカ本土への「脅威となった」ことである。

ブッシュ大統領が、一般教書演説の中で反テロ対策の標的として、北朝鮮、イラク、イランを「悪の枢軸(axis of evil)」と名指しして非難したのは、今から10年前のことだ。おそらく当時の共和党の安全保障担当者は、10年後にまだ北朝鮮が“金王朝”のまま存続しているとは思っていなかったに違いない。

だが、10年後の今、ついに北朝鮮はアメリカ本土をも射程に収める長距離弾道ミサイルの実験を成功させたのである。ブッシュ大統領が懸念した「悪魔」がついにアメリカ東海岸への脅威となったのだ。

北朝鮮が核ミサイルを開発したら、いったいどうなるのか。さまざまな米朝交渉が核の脅威によって、アメリカの思い通りにはならない事態がくる。それは、核の脅威を前面に打ち出して、食糧支援をはじめ経済援助を勝ち取ろうとする北朝鮮の姿を映し出している。

核ミサイルを実用化するには、「核弾頭の小型化」と「起爆装置の開発」が不可欠だ。これが成功しなければ、弾道ミサイルを遠くまで飛ばすことができず、さらにたとえ着弾しても、核爆発を起こさないのである。

そして、この2つの開発は、これまで当ブログでも書いてきたように、簡単なものではない。長距離弾道ミサイルの発射を成功させるより遥かに高度な技術が必要だ。

逆にいえば、それまでが、アメリカに「残された時間」となった。世界の警察国家たるアメリカは、いよいよ自らの生存をかけて本気で北朝鮮と対峙しなければならなくなったのである。

アメリカは、日本のような“平和ボケ”した国とは違う。自らの安全を脅かす存在を許すような国ではない。これまでの経済制裁とはレベルの違う「制裁」に入るだろう。金正恩にとって強盛大国元年とは、国家滅亡への“カウントダウン”が始まった年となったのである。

カテゴリ: 北朝鮮

横田早紀江さんのメッセージをどう受け止めるか

2012.09.03

昨日、日比谷公会堂で開かれたで北朝鮮に拉致された日本人の救出を求める「国民大集会」での横田早紀江さん(76)の訴えは、痛烈であり、本質をつくものだった。

「私はいつ倒れてもいいんです。めぐみちゃんと再会し、ひとこと話してから死にたいと思っています」。そう前置きして早紀江さんは、こう語った。

「(北朝鮮に)こんなにバカにされながら、なぜ怒らないのでしょうか。もっと怒ってください。“日本人の心”として怒って、この国をもっと“強い国”、“温かい心を持った国”にしてください」

もっと“強い国”、そして“温かい心を持った国”――娘を拉致された母親の、率直で、あまりに当然過ぎるこの訴えは、戦後日本を闊歩してきた“うわべだけの正義”を振りかざす政治家やメディアに対する悲痛な叫びだったと思う。

私は、早紀江さんの訴えを聴きながら、北朝鮮によって1978年に引き起こされた「レバノン女性拉致事件」を思い出した。

自国の女性4人を北朝鮮に拉致されたレバノンが北朝鮮に対して「国交断絶」を宣言し、「もし帰さなければ、武力行使を辞さない」という強硬姿勢によって、事件発覚後1年以内に全員を取り戻した一件だ。

私が、この一件を思いだしたのは、早紀江さんが、「もっと強い国」そして「温かい心を持った国」にして欲しいという、子を持つ母親としてだけでなく、一国民としての率直な思いが滲み出ていたからだ。

レバノンは、拉致された女性のために「戦争も辞さず」という毅然とした姿勢を示し、被害者を取り戻した。では、日本はどうか。

いくら拉致事件が明らかになっても、日本が国家として毅然とした姿勢を示したことは、一度もなかった。それは、早紀江さんが言うように、日本が真の意味で「温かい心」を持たない国だったからである。

早紀江さんの言葉を裏返せば、日本という国は、「弱い国」であり、「心の冷たい国」だということになる。まさに、その通りである。戦後日本は、一人の国民の苦悩や哀しみを感じ取ることができない、「冷たい国」となり果てたのである。

私は、日本は「偽善国家」であると思っている。一部の政治家やメディアに操られ、国民の生命・財産を守れないばかりか、国家として当たり前のことを主張できない情けない国に成り果てている。

私は、事態がここに至るまでの多くの政治家や政党の言動を思い出す。北朝鮮の拉致問題で“奪還”を訴えつづける肉親の思いをよそに、日頃、「人権尊重」を訴えてやまなかった土井たか子・社会党委員長は、テレビで「拉致問題、拉致問題と言いますが、先方が拉致なんかないって言っているんだからないんです」と発言したことがある。

現に社会党は、「(北朝鮮による拉致は)何一つ根拠がなく、元工作員の矛盾だらけのまた聞き証言やその他の意味づけがされて生まれた」「(これは)日本政府が食糧支援をさせないために最近になって創作された事件である」ということを公式見解としていた。

一方の自民党も似たようなものだ。拉致被害者の家族会が北朝鮮へのコメ支援を「やめてくれ」といくら懇願しても、加藤紘一・自民党幹事長(当時)はこれを猛然と推進し、ついに北朝鮮への50万トンという気の遠くなるような量のコメ支援を実現させた。

それを推進したのは、加藤氏が私設秘書として使っていた「吉田猛」なる人物だ。この人物が北朝鮮の工作員であることを知らない加藤氏は、まんまとその計略に嵌まっていたのである。

自国の国民を取り戻すという当たり前の責務を放棄し、コメの供与を「人道支援」と称しておこない、結果的に金正日政権を存続させた日本の政治家たち。主権侵害を糺(ただ)し、国民を取り戻すという気概が全くない政治家と、それを支援するメディアの存在によって、日本は早紀江さんの言うように「怒らない国」となり、「冷たい国」になってしまったのである。

現在、北朝鮮の食糧事情は“極限”を超えている。今回の日本への接触は、北朝鮮の日本に対する食糧支援要請の悲鳴のようなものである。だが、日本は、ここで毅然たる姿勢を貫かなければならない。この状況だからこそ、今、拉致被害者を「取り戻さなければならない」のである。

その方法とは何か。実は、北朝鮮をギブアップさせることができる「カード」を日本は持っている。いわば“伝家の宝刀”だ。それは、在日朝鮮人の北朝鮮への渡航に対して「再入国」を許可しないことである。

いま日本は、一部の朝鮮総連幹部に限って、日本への「再入国」を禁止しているが、一般の在日朝鮮人は、その対象となっていない。そのため、日本からの北朝鮮へのカネの流れをせき止めることができないまま現在に至っている。

これを完全に実施することができれば、近い将来、必ず北朝鮮は「破綻」する。言うまでもなく北朝鮮にとって、それだけはどうしても避けなければならない。そのために、あらゆる方策を使って、それを阻止にかかるだろう。

その時、日本は「まず拉致被害者を帰すことが先決だ」と、毅然たる姿勢を貫けばいい。だが、その時、必ず“親北朝鮮”のメディアや政治家によって「それは人道的に許せない」という非難が巻き起こるに違いない。

今まで繰り返されてきたのと同様、“うわべだけの正義”を振りかざすメディアや政治家が、そう声高に叫ぶだろう。しかし、国民は冷静に見ておけばいい。どの政治家が、またどのメディアが「人道」という名のもとに、実は「本当の人権」をいかに蔑ろにしているかということを。

早紀江さんが悲痛な思いで絞り出した「この国をもっと“強い国”に、“温かい心を持った国”にしてください」という意味を、今こそ国民は噛みしめ、その障害となっている政治家やメディアの「正体」を見ておけばいいのである。

偽善を廃し、真の人道国家に日本が生まれ変わることができるかどうか。それは、昨日の横田早紀江さんの痛烈で、奥の深い“メッセージ”をわれわれ国民がどう受け止めるか、にかかっているのではないだろうか。

カテゴリ: 北朝鮮

「テポドン2号」発射に思う

2012.04.13

いま長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の発射実験が失敗に終わったというニュースが流れている。北朝鮮の新独裁者・金正恩(29)の権威を高めるために発射されたテポドンは、無残にも上空120キロ付近で爆発したそうだ。

黄海に落下し、日本ほか周辺国への影響はなし、という結果となった。しかし、今回の一連の騒動を見ながら、私は改めて背筋が寒くなる思いがしている。

それは、ニュースを聞いて、「ああ、終わった」「失敗でよかったね」という空気が早くも流れていることだ。特にマスコミの間にその雰囲気が蔓延している。怖いのは、この長距離弾道ミサイル発射の意味がわかっていない人が多いということである。

多くの北朝鮮問題の専門家が予想する通り、遠からず金正恩は、核実験の実施に踏み切るだろう。失敗を重ねながらも、核兵器の開発成功に一歩一歩近づいているのである。

私には、「(発射が)失敗に終わってよかった」という平和ボケした見方で、またコトの本質がうやむやになることが一番、怖い。

想像して欲しい。仮に長距離弾道ミサイルの発射実験が成功し、核実験が終わり、核弾頭の小型化が実現し、起爆装置の開発も成功したとしたら、私たちの住む「東アジア」はどうなるか、ということである。

あの国が核兵器を持ち、いつでも弾道ミサイル「テポドン」に小型化した核弾頭を乗せられる状況が生まれた時、「日本はどうなるか」ということだ。

その時、あの国とは“交渉”さえできなくなるということを考えたことがあるだろうか。たしかにアメリカやロシアも核兵器を持っている。しかし、同じ核保有といっても、北朝鮮が持つのとは意味が違う。

少なくともアメリカやロシアが核兵器の力をちらつかせて国際社会で交渉をおこなうことはない。だが、彼(か)の国はどうだろうか。

食糧支援にしろ、領土問題にしろ、拉致問題にしろ、賠償金問題にしろ、すべてのジャンルが「核兵器を背景にした議論」をやってくることは確実だ。そのために食糧さえない困窮の中で、巨額の費用を投じて弾道ミサイル実験や核実験をおこなっているのである。

さらに言えば、実際に北朝鮮が核と弾道ミサイルを「保有」しさえすれば、それが使用される可能性は少なくない。しかも、最も使う対象として可能性が高いのは、彼らにとって「憎っくき日本」である。

すなわち、北朝鮮問題というのは、彼らが核兵器を保有し、長距離弾道ミサイルの開発に成功するまでが「すべて」なのである。その時までに、北朝鮮の独裁体制を崩壊させ、民主国家に生まれ変わらせることができるのかどうか。そこに日本の命運はかかっているのである。

私は、今回のニュースを見ながら、3月22日に韓国の「朝鮮日報」が報じた一件を思い出した。北朝鮮で年明けに公開処刑された人民武力部のナンバー2(副部長)は、迫撃砲の着弾地点に立たされるという残虐な方法で処刑が行われたと報じられていた。

その際、金正恩は、「髪の毛1本も残すな」と指示したという。国際社会の反発をものともせずに、今回の発射実験を強行した金正恩。その狂気が、とてつもない武器を実際に手にした時、どうなるのか、想像するだけで背筋が寒くなる。

それにしても、本日午前7時40分頃、実際に弾道ミサイルが発射された時、アメリカからの通報を受けながら、「いま未確認の飛翔体が発射されたとの情報がありました」ということすら公表しなかった民主党政権のお粗末ぶりには呆れ果てる。

国民の生命・財産を守るべき役割すらわかっていない人たちのレベルが、またしても露呈された。いつまで、こんな政権を私たち国民は戴いていなければならないのだろうか。テポドン失敗のニュースを見ながら、そんな溜息が出てきてしまった。

カテゴリ: 北朝鮮

奇妙な国の“権力継承”によって

2011.12.20

まことに奇妙な国の権力が28歳の若者に“継承”された。昨日、死亡が明らかにされた金正日・朝鮮労働党総書記の後継者、金正恩(28)の肥え太った身体を見て、溜息が洩れた人は少なくないだろう。

肉がついた小鼻と二重顎(あご)、そしてぷっくり膨らんだ頬……それは、餓死者が相次ぐ北朝鮮の実態とはあまりにかけ離れた姿だった。朝鮮労働党が指導する国家が、ついに「3代」にわたって世襲されたことは間違いなく世界史に特筆されるべきことだ。

1974年に父・金日成の後継者として「推戴」され、実際に権力が継承されるまでの20年間、長い長い準備期間があった金正日は、その間にラングーン爆破テロ事件(83年)、大韓航空機爆破事件(87年)、日本人拉致事件(70年代~80年代)等々という非人道的事件を次々と引き起こし、多くの犠牲者を生み続けた。そして、今回、ついにどの事件も精算することなく金正日はこの世を去ったのである。

その金正日がかわいくて仕方がなかったのが、肥え太ったこの金正恩氏である。すでに偶像化の一環として「砲術の天才」とする宣伝がおこなわれ、昨年11月には、朝鮮人民軍が韓国の延坪(ヨンピョン)島を突如砲撃し、韓国軍兵士2人と民間人2人が死亡したことは記憶に新しい。

“実績づくり”というトンでもない目的のために多くの犠牲者を生む事態は、後継者としての「期間が短かった」ため、父・金正日の時よりも小さかったのは幸いだったかもしれない。

しかし、なんの実績もない金正恩が、今後、軍へのにらみを利かせるためにどんなことを始めるかは、予想もつかない。父がいて初めて「後継者」であったこの青年が、実績もないまま軍部を抑え込める保証はどこにもないからである。

“実績”とは、人民に対する支配を「恐怖」によっておこなっているこういう特殊な国家の場合、過激であればあるほど効果がある。事件のインパクトが強ければ強いほど「恐怖」が増すからだ。

この青年の実績づくりのための犠牲者が出ないよう、隣国は今後、細心の注意を払わなければならない。2012年が東アジア大混乱の年とならないためには、国家の垣根を越えてこの無法国家と対峙する覚悟が必要なのである。

カテゴリ: 北朝鮮

“悪魔の武器”と北朝鮮

2010.12.13

今日のニュースで最も関心を抱いたのは、12日のCNNの番組にアメリカのブレア前国家情報長官が出演し、北朝鮮の度重なる挑発行為に対して「韓国の忍耐が限界に近づきつつあるとの見解を示した」というものだ。

ブレア氏は、挑発への対抗手段として「韓国が軍事力行使に踏み切る恐れがある」と懸念したのである。ブレア氏の指摘を俟(ま)つまでもなく朝鮮半島における南北激突の事態は、実際に「そこ」まで迫っている。

小沢一郎氏の政倫審への出席問題をめぐる民主党内のレベルの低い争いを見ていると、「そんなことをしている場合か」という思いがこみ上げてくる。

しかし、同じことを私は菅政権に対してだけでなく日本国民全体に対しても問いたいと思う。常にその時々の「現状」だけに右往左往するだけで、われわれ日本国民は許されるのか、という思いである。

北朝鮮が瀬戸際外交を繰り広げ、その度に資金的あるいは食糧という“人道援助”を勝ち取るサマを私たちは延々と見つづけた。

今回は後継者キム・ジョンウンの登場も相俟って、北朝鮮はこれまでの挑発行為とはレベルの違う軍事行動に出て来た。

しかし、これは「今だからまだ許されている」ということをどのくらいわれわれ日本国民は認識できているだろうか。

想像してもらいたい。核開発までにひたすら“時間稼ぎ”をおこなっている北朝鮮が、その「目的を達した時」にどうなるか、ということだ。

それは、「北朝鮮が核開発を完了し、核弾頭の小型化と起爆装置の開発を終えた時」のことである。その時、果たしてどういう事態が生まれるか、私たち日本人は想像してみたことがあるだろうか。

核弾頭がテポドンに搭載できるほどの「小型化」がはかられ、そして、着弾した時に「きちんと作動する起爆装置」が開発された事態のことである。

その“悪魔の武器”を北朝鮮が手に入れた時、日本とはどういう“力関係”になるだろうか。あの狂気の国家による数々の脅迫行為に日本は耐えられるだろうか。

つまり、北朝鮮が悪魔の武器を手に入れた瞬間、もはや東アジアの国際情勢はそれまでとはまったく「異なるものになる」ということである。

今回の北朝鮮の軍事行動を機に、どういう意識をもってこの事態に対応すべきなのか、これまでと同じ「危機感の欠如した」先送りの対処法だけは許されないのである。

しかし、小沢問題のみに右往左往する菅政権にそんな危機意識などあるはずもなく、国会関連のニュースを見ながら、私には、ただ深い溜息がこみ上げてくるだけである。

カテゴリ: 北朝鮮

世界が抱えた「キム・ジョンウン」という“大爆弾”

2010.11.23

今日は、TBSの「Nスタ」に出演する直前、韓国の延坪(ヨンピョン)島に北朝鮮から砲撃があり、数十発が着弾、多くの民家が炎上しているというニュースが飛び込んできた。

スタジオ入りしたら、超弩級のニュースに事前の番組内容が吹っ飛び、騒然としていた。北朝鮮問題の専門家がスタジオ入りするなど、普段のNスタとはまるで異なるピリピリした雰囲気だった。

ニュース映像や専門家の話が続いたため、私がコメントする時間は極めて短くなってしまったが、私は北朝鮮の後継者に決まった「キム・ジョンウン」の正体が「早くも明らかになった」ことに衝撃を覚えていた。

「東アジア、いや世界は大変な“爆弾”を抱えてしまった」――それが正直な感想だった。日本人拉致事件やラングーン事件、大韓航空機爆破事件を引き起こした若き日の父・金正日同様、「キム・ジョンウン」という27歳の後継者が、「何をやるかわからない」「常識が通じない」「簡単に“一線”を越えてしまう」という危険人物であることが全世界に明らかになったのだ。

金王朝が倒れない限り、日本はこの若者とこれから何十年と“つき合って”いかなければならないのである。

“軍事の天才”というフレコミで一気に金正日に次ぐナンバー2にのし上がった彼が、これから何十年もの間、日本に向けてミサイルの発射ボタンを押さない保証はどこにもない。いや「いつかは押すに違いない」と思う。

しかも、日本への敵意を剥き出しにする中国が「北朝鮮の背後にいること」も厄介だ。日本と日本人にとって、この「TVゲーム」と「戦争」が大好きな若者が“全権”を持つ体制が「存続していく」ことがいかに危険かを認識しなければならないのである。

延坪島の民家が炎上する映像を見ながら、日本だけにとどまらず、東アジア全体にとって極めて危険な人物を「抱え込んでしまった」意味を、私はずっと考えていた。

カテゴリ: 北朝鮮

一触即発の朝鮮半島情勢と「中国」

2010.05.25

いよいよ朝鮮半島情勢が緊迫してきた。韓国の李明博大統領が対北制裁措置を発表し、国防白書に「北朝鮮は主たる敵」という文言を復活させることを決定したら、たちまち北朝鮮は「すべての南北関係を断絶する」という宣言で対抗してきた。

いよいよ一触即発である。ここで次の魚雷が「発射」されたら、一気に全面戦争に突入することは確実だ。

韓国の金大中、盧武鉉(ノ・ムヒョン)両大統領が鳴り物入りで実施した北朝鮮への宥和策“太陽政策”がいかに机上における「夢想」に過ぎなかったか、改めて証明されたとも言える。

なぜ魚雷が発射されたのかは不明だが、「金正日の威信が低下し、軍部の暴発を止められないところまで来ている」という観測が案外当たっているかもしれない。

一昨年夏に生死の境を彷徨(さまよ)った金正日が、必死で求心力を保とうとしているのはわかる。しかし、食糧不足が“飢餓状態”にまで発展し、そこにデノミの失敗が拍車をかけ、いよいよ「軍の統制までとれなくなった」と見る方が自然だろう。

かつて日本が戦争への道を突き進んだ経緯を思い出してみる必要がある。東北地方を襲った大冷害と大津波、そして世界恐慌によって、軍部が暴発し、2・26事件をはじめ、戦争にヒタ走った歴史をわが国は持っている。農家での娘の身売りが常態化した末に、若手将校たちは立ち上がった、いや“暴発”したのである。

北朝鮮の軍隊が、飢餓状態の中で規律と秩序を守っていけるとはとても思えない。もともと賄賂が横行し、「カネでなんでもカタがつく」と言われた国だ。とても秩序は維持できないだろう。

だが、ここでポイントになるのは、中国の存在である。中国は、北朝鮮との太いパイプを生かし、これまでこの無法国家を「カードとして利用して来た」経緯がある。

無法者国家・北朝鮮が唯一、言うことを聞くのは中国だ。そして、中国は北を国際社会に対する“カード”として最大限利用してきたのだ。

しかし、そのために多くの北朝鮮人民が犠牲になってきた。脱北した人たちを中国の公安は容赦なく追い詰め、逮捕し、北に送還してきた。

強制送還されれば、殺されるか収容所送りか、どちらかであるにもかかわらず、中国は脱北(亡命)した人たちの人権をまったく無視してきたのだ。

もし、中国が人道的見地から彼らの脱北(亡命)を許せば、金正日の怒りによって忽ち中朝関係は冷え込み、中国は北を「カードとして利用する」ことはできなくなっただろう。

要するに、中国の「北朝鮮カード」とは、脱北者に対する人権圧殺の上に初めて成り立ったものだったのである。

いま話題の映画「クロッシング」は脱北者の悲劇を描いた力作だが、ここでも中国の公安に追い詰められる北朝鮮人民の姿がリアルに表現されている。

この映画を見て、今回の韓国哨戒艇撃沈事件を考えれば、また新たな視点が生まれるに違いない。すべてに優先して、中国に“北朝鮮カード”を手放させる手段を講じなければならないことに気づくのではないだろうか。

まずそこに日・米・韓は、最初のターゲットを置くべきなのである。今は、三国のより緊密な連携が望まれる時だ。

懸念されるのは、国家の安全保障問題の根幹をまるで理解できていない「鳩山総理」その人の存在である。

カテゴリ: 中国, 北朝鮮

東京は「火の海」にならないのか

2010.05.15

鹿児島から和歌山、大阪、兵庫と“転戦”している。この夏刊行予定のノンフィクションの取材である。

連日、取材対象者から素晴らしい言葉が出て、「人間」という存在そのものに対してさまざまな思いがこみ上げてくる。それらは8月出版予定の作品の上で詳細に紹介させていただくつもりだ。

それと共に、ここへ来て、さまざまな面で風雲急を告げる事態が起こってきている。私は、それが気になって仕方がない。

ひとつは、小沢一郎民主党幹事長への検察の3度目の事情聴取であり、もうひとつは、韓国の海軍哨戒艦沈没事件だ。

小沢氏の問題はここでは措(お)くとして、韓国の沈没事件は、まさに一触即発といっていい。沈没原因を調査していた軍・民間合同調査団は、すでに爆発原因を「魚雷」とほぼ断定している。

果たしてこのまま「北朝鮮からの攻撃」ということが証明された場合、韓国の李明博(イミョンバク)大統領はどんな政治決断をするだろうか。

正式発表は20日とされるが、「北朝鮮の関与」についての決定的な証拠が出れば、激しやすい韓国国民が大統領に対して強行決断を促すに違いない。

魚雷によって艦船が攻撃を受ければ、言うまでもないが、これは一種の宣戦布告である。報復≒戦争勃発であり、極東情勢は一気に混沌となる。

昨年実施のデノミ政策の無残な失敗と、飢餓状態の食糧事情――北朝鮮は、金正日自ら、中国に“物乞い”に行かなければならないほど追いつめられている。この国がどこまで暴発を回避できるのか、甚だ疑問なのだ。

また、韓国が北朝鮮の蛮行をこのまま見逃すことができるのか。「ソウルは火の海」と北朝鮮が軍事的優位を誇って脅したのは、今から16年前、1994年3月のことだった。

ソウルだけではない。東京が「火の海」にならない保障はどこにもない。平和ボケの日本人を嘲笑うように、普天間基地問題も、そしてこの魚雷撃沈事件も水面下でマグマが爆発を待つかのようにふつふつと音を立てている。

目を離すことは許されない。

カテゴリ: 北朝鮮, 随感

何が起こってもおかしくない「北朝鮮」

2010.03.18

朝9時半発の中華航空で台湾から帰ってきた。帰国した途端、北朝鮮・朝鮮労働党の朴南基(パクナムギ)前計画財政部長が、先週、デノミネーション(通貨単位の切り下げ)失敗の責任を問われ、「処刑されていた」というニュースが流れていた。

韓国の聯合ニュースが報じたもので、朴氏は、デノミの失敗と民心の疲弊と混乱という事態を招いた全責任をかぶせられ、「反革命分子」として平壌市郊外で銃殺されたという。

当ブログが「追い詰められた北朝鮮」と題して、北朝鮮の状態がいかに極限に達しているかを書いたのは、1か月前の2月17日である。

いよいよ国家として「最終段階」を迎えており、「慢性的食糧不足」から、「飢餓状態」に入っていることを指摘した。集計には決して出ることのない“餓死”によって、この冬を超えられなかった人民は相当数にのぼると見られている。

責任をほかに転嫁して自らの求心力を維持しようというのは、金正日総書記の常套手段だ。しかし、ここまで飢餓状態が進行してくると、さすがに「いつ何が起こってもおかしくない」状態になっているのは間違いない。

こういう時に、“外”に関心をそらせるのも、彼の国の常套手段だ。考えられるのは、テポドンの発射で、人民の疲弊した気持ちを昂揚させること。“実験”という名の暴発に要警戒である。

カテゴリ: 北朝鮮

追い詰められた北朝鮮

2010.02.17

昨日、金正日総書記が68歳の誕生日を迎えた北朝鮮では、白頭山で派手な花火が打ち上げられるなど、一見、国中が祝賀ムードに包まれているかのように見えた。

しかし、現地から漏れ出す情報は、いよいよ国家として「最終段階を迎えている」ことを指し示すものばかりだ。「慢性的食糧不足」から、ついに「飢餓状態」に入っていることが、さまざまなルートから明らかになっている。

「トウモロコシの芯を食べている」「干していた人糞すら盗まれる」「脱北女性が国境警備兵によって6000元~7000元(約8万円)で売買されている」……等々、この冬がいかに“地獄”であるかが伝わってくる。

外貨が決定的に不足している中で昨年末に断行したデノミが、いよいよ経済ばかりか国家のあらゆる部門を破綻させた感が強い。食べるものもない中で優先させてきた核ミサイル開発がストップされるのかどうか、日本人も冷静に事態の推移を見守る必要がある。

日本にとって重要なことは、ここで安易に“人道援助”という甘言に乗せられないことだ。食糧援助をしても「特定の支配階層を助けるだけ」であり、末端の人民の飢餓が解消されるわけではない。それなら、人民の飢餓を放ったらかしにして「核ミサイル開発に血道をあげてきた」現体制が崩壊する方が、よほど人民の救いになる。

今の人民の苦しみを考えると、胸が張り裂ける思いの人も少なくないだろう。あの実態を知れば、無理もない。北朝鮮の脱北問題を真っ正面から取り上げた韓国映画『クロッシング』が日本でも4月から上映されることが決まっている。

あの地獄がいかなるものか、こういうものを観ることによって少しでも実感すべきだと思う。同時に、彼(か)の政権が破綻しそうになる度に「手を差しのべて」、独裁者を生き延びさせてきたことの意味をさすがに世界も知るべきだろう。

この映画を観れば、自分たちが「何をすべきか」学ぶのではないだろうか。六カ国協議で北朝鮮の掌(てのひら)で踊らされ続けたアメリカのヒル国務次官補と同じ轍は絶対に踏んではならないのである。

カテゴリ: 北朝鮮

風雲急を告げる「北朝鮮」

2009.06.18

「国連制裁で事態が悪化した場合、北朝鮮は報復として韓国ではなく日本か在日米軍基地を攻撃するだろう」

軍事専門家の間では、ごく一般的で「常識」ともされる意見だが、これがアメリカ下院外交員会の公聴会で北朝鮮問題の専門家が発言したとしたら、いかがだろうか。

さすがに平和ボケを指摘される日本人も驚くのではないか。本日、北朝鮮の暴発が刻一刻と近づいている中、アメリカの国際政策センターで朝鮮半島問題研究者のセリグ・ハリソン氏が、公聴会(6月17日)でそう証言したことを共同電が報じた。

中国紙が金正日総書記の三男、正雲(ジョンウン)が「後継者に決まったようだ」と報じたり、「金総書記の健康状態にすでに非常に大きな問題が発生している」と憶測記事が出たりと、ここのところ北朝鮮内部で「何かが起こっている」ことは間違いない。しかし、現時点では、その「何か」が誰にもわかっていない。

そんな中で、ハリソン氏が下院公聴会という公の場で、「金総書記の健康状態悪化後、反日感情が強く、国粋主義的で、海外経験のない若手将校らが政権内で立場を強めた」とも指摘したのだ。

少なくとも、北朝鮮軍部の暴発という危機が高まっていることが推測される。

幸いに北は、まだ「核弾頭の小型化」と「起爆装置の開発」には成功していないと見られている。ということは、まだ東京が「人類史上3発目の原爆」を落とされる可能性は低いのかもしれない。しかし、それも「現時点では」という条件つきである。

ハリソン氏は公聴会でこうも語ったという。「北朝鮮の若手将校らは、自分たちの軍事力を非現実的なほど高く評価しており、北の高官はそのことに対して憂慮を深めている」と。いつの時代も、どこの国にも暴発する軍人というのはいるらしい。

日本人の太平(泰平)の眠りを覚ます「北の暴発」は果たしてあるのだろうか。いずれにせよ米の北朝鮮問題の第一人者が発した「警告」を聞き流すことは許されない。

カテゴリ: 北朝鮮

日本をあざ笑う北朝鮮

2009.05.25

平和ボケした日本をあざ笑うように、北朝鮮がまたしてもやってくれた。

前回(2006年10月)の数倍規模の「核」実験をおこない、同時にミサイル基地の舞水端里(ムスダンリ)から短距離ミサイル1発を発射したのだ。

世界に向けての大デモンストレーションである。核保有国になれば、国際的な地位は格段に上昇する。もはやどの大国であろうと、北朝鮮の意向を無視できなくなる。いよいよそういう事態が間近に迫ったことをこの核実験は物語っている。

以前のブログでも書いたが、この性急な北朝鮮の動きは、金正日が昨年夏、脳梗塞で倒れ、生死の境を彷徨ったことと無縁ではないだろう。一度、死の淵に立った独裁者が、そこから復活したとき何を考えるか。想像するだけで恐ろしい。

周辺国が比較的落ち着いているのは当然だ。「北朝鮮の狙いは日本」であることがわかっているからだ。幸いに、長距離ミサイルに搭載できるような「核弾頭の小型化」と「起爆装置の開発」までには、まだまだ時間がかかるだろう。しかし、その時期も「いつかは来る」のである。

自国民を拉致されても、ただ手を拱くだけの日本。国家の役割が、「国民の生命と財産、そして国土を守る」ことであることは自明だが、日本は、いまだに平和ボケした書生論に覆い尽くされている。

およそ150年前、ペリー来航によって「太平の眠り」を醒まされた日本。果たして、21世紀の日本は、「理想を語って、国滅ぶ」道を選ぶのだろうか。

徹底的な経済封鎖をはじめ、とるべき手段はいくらでもある。日本を襲う可能性がある「三発目の原爆」とどう向き合うのか、日本人の見識と危機意識が今、問われている。

カテゴリ: 北朝鮮

「またしても失敗」をどう捉えるか

2009.04.05

北朝鮮の「テポドン2号」発射実験は、失敗に終わった。米航空宇宙防衛司令部(NORAD)によれば、「2段目以降は太平洋に落下し、何も軌道に乗らなかった」らしい。要するに、「人工衛星を軌道に乗せた」という北朝鮮の主張はデタラメだというのだ。

1段目は日本海に、2段目以降は太平洋に落下したとのことで、軌道に乗せるどころか、またしても「ただ遠くにミサイルを飛ばした」だけに終わった。この失敗で、北朝鮮科学者は将軍さまの怒りを買い、“粛清”の憂き目に遭うことだろう。当ブログでも2日にわたって記述した「核弾頭の小型化」と「起爆装置の開発」も、北朝鮮がミサイルを軌道に乗せることさえできないレベルの技術力だとすると、まだまだ成功までにはクリアしなければならないいくつもの壁があるに違いない。

この「時間的余裕」こそ、日本にとってチャンスである。今回のような国際的な無法行為に対しては、きちんと制裁をおこない、2度と同じようなことができないように手を打たなければならない。金融制裁や禁輸、犯罪行為の摘発など、国際社会における北朝鮮への監視体制を日本が主導して構築し、最終的にはあの独裁政権を瓦解させ、民主的な政権へと“変革”しなければならない。そうでなければ、日本は将来に禍根を残すことになる。繰り返すが、「核弾頭の小型化」と「起爆装置の開発」が成功してからでは、遅いのである。

カテゴリ: 北朝鮮

「絶対国防圏」と北朝鮮

2009.04.04

昭和19年7月7日は、日本の太平洋戦争の敗北が事実上、決定した日である。この日、日本のサイパン島守備隊が、最後の“バンザイ突撃”を敢行し、玉砕した。サイパン陥落が意味するのは、日本の「絶対国防圏」の崩壊だ。

この小さな島が米軍の手に落ちた瞬間、日本の絶対国防圏は崩れ、日本全土が米軍機の空襲に晒されることが決まった。近代戦において、自国領土の制空権を失った国が戦争に勝てる見込みはほとんどない。

サイパン陥落の翌日、今上天皇である当時10歳の明仁殿下は、疎開していた静岡県沼津の御用邸から、さっそく栃木県の日光へと「再疎開」されている。日本が、この日から多くの犠牲を払った末に、実際に敗戦を選択するのは、それから1年余りのちのことだ。

今回の北朝鮮のミサイル騒動は、これまでの似通った過去の出来事と少々、趣きを異にしている。発射実験の発表の仕方や、日本をはじめ国際社会への嚙みつき方にどこか「余裕」が感じられないのだ。

これは昨年夏、脳梗塞で倒れ、一時は危篤に陥っていたとされる金正日の心理状態と無縁ではないだろう。一度、死にかけた将軍さまが、弾道ミサイルをはじめ、多くの懸案事項に「性急な結果」を求めてくるのは当然である。それだけに今回の騒動には、これまで以上の“必死さ”が感じられるのである。

昨日ブログに書いた北朝鮮による「核弾頭の小型化」と「起爆装置の開発」の問題。これに北朝鮮が成功することは、すなわち現代の日本の「絶対国防圏」の崩壊を意味する。そうならない内に、日本国民にはどんな選択と意思表示が必要なのか、よく考えなければならない。初日のミサイル発射がなかったことや誤探知などに一喜一憂している場合ではないのである。

カテゴリ: 北朝鮮, 政治, 随感

「日本が生き残る」ためのチャンス

2009.04.03

いよいよ北朝鮮が人工衛星名目で弾道ミサイルを発射させる「その日」がやって来る。北朝鮮は発射期間に5日間の幅を持たせているが、これはあくまで天候の関係によるもので、麻生総理が予想した通り、天候が悪化しない限り「発射」はおそらく初日の「4月4日」だろう。

これまで射程2500キロの「テポドン1号」と射程6700キロの「テポドン2号」の発射実験に失敗している北朝鮮としては、今度も失敗すれば担当者は粛清必至。それだけに、文字通り北朝鮮科学者の「命をかけて」の実験になる。

日本の迎撃システムがどう機能するか、国民注視の中での対応だが、この事態をかつて朝鮮労働党と友党関係にあった社会党の流れを組む議員たちはどう見ているのか気になる。社民党はもちろん、民主党の中にもかつての社会党議員は多数いる。

横田早紀江さんら拉致被害者たちの痛烈な非難によって落選し、「政界引退」を余儀なくされた土井たか子さんは、友好関係にあった北朝鮮の出方をいったいどう見ているのだろうか。また、六カ国協議で北朝鮮に手玉にとられ、土俵際に追いつめられた北朝鮮を「金融制裁解除」によって助けたアメリカのヒル国務次官補は、今これをどう見ているのだろうか。

しかし、私には、逆にこれが「日本が生き残る」ためには重要なチャンスであるような気がしてならない。そう、これは日本にとって「生き残りのチャンス」なのではないか。

現時点では、北朝鮮が「核弾頭の小型化」と「起爆装置の開発」に成功していないことは明らかだ。これが成功すれば、弾道ミサイルは、そのまま「核ミサイル」となる。今回の国連決議を受けて北朝鮮スポークスマンが「もし日本が迎撃した場合、再侵略戦争の砲声とみなし、最も威力ある軍事的手段で打ち砕くだろう」と警告したように、北朝鮮は今後も機会あるごとに「日本をターゲットにする」ことは間違いない。

北朝鮮の威嚇が、仮に「核弾頭の小型化」と「起爆装置の開発」に成功した後だったら、日本国民は果たして平静にいられるのだろうか。北朝鮮による「核弾頭の小型化」と「起爆装置の開発」の成功とは、すなわち日本全土が北朝鮮の核攻撃の危険に晒されるという意味である。

そこまでいく前に、日本は「生存をかけて」北朝鮮の「非武装化」を実現しなければならないのである。北朝鮮制裁の国連安保理決議に消極的な中国とロシアは、日本が慌てふためく姿をむしろ面白がっているかのようにも見える。国際政治の現実をこの北朝鮮ミサイル問題は、日本国民に突きつけてくれている。

カテゴリ: 北朝鮮

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