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TPP“秋の陣”に思う

2011.11.09

秋が深まっている。そろそろコートを着る人が出てきてもおかしくない。北海道や東北では朝夕、ストーブが欠かせなくなっているそうだ。しかし永田町&霞が関は、今日、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)問題で1日中、緊張感と熱気が満ちていた。

ここのところ、連日、永田町では「いつか見た光景」が続いている。米価闘争の時にハチ巻きをした陳情団が議員会館を取り囲む、あの「かつての風景」である。

昨日、両国国技館で開いた反対集会などは、巨大集票マシーンでもある全中(全国農業協同組合中央会)が、自分たちの主張を“力”で実現するために全国動員をかけた時代そのままだった。いかにこの組織が圧力団体そのものだったかがよくわかる。

この光景を見ながら、大規模化、もしくは効率化を果たせないまま続いてきた日本の農業の実態を私は改めて思い起こした。日本の農政とは、大規模化と効率化を果たすことによって農業だけで生計を立てていこうとするヤル気のある農業従事者ではなく、兼業農家を補助金漬けにして「競争力のない農家」をつくり続けてきた。

最近では、「半農半X」などという言葉まで生まれているそうだが、そういう農家を中心に、TPP反対の声が異常な熱気で湧き起こっているのだ。しかし、日本の農業がTPP参加で本当に崩壊してしまうのかというと、実はそうでもない。効率的な農業をおこないたいヤル気のある農家には、TPP参加を望む声が小さくないのだ。

ほとんど例外なく、将来的に物品の関税を100%撤廃するのが原則だというTPP。これは、日本にとって危機であると同時にチャンスでもある。少なくとも、日本がTPPに「不参加」で、韓国が「参加」だった場合は、世界の市場で日本の工業生産物が韓国の後塵を拝するようになるのは確実だ。

すなわち工業立国・日本が「敗北する」のである。すでに、カロリーベースで日本の総合食料自給率は40%に満たない。大豆を例にとればわかりやすいが、大豆の自給率は5%に過ぎず、国内の大豆では国民が食べる豆腐すら作れないのが実情だ。

もし、本気で日本の食料自給率を限りなく100パーセントに近づけたいなら、昔と同じように鎖国し、日本の国土を改めて「農業中心体制に変えていく」しかないだろう。

その是非は、それぞれの国民によって異なると思うが、少なくとも技術立国・日本の商品が、高い関税のせいで世界中からソッポを向かれるということになったら、それこそ日本の打撃ははかり知れない。永田町&霞が関の混乱ぶりを見ながら、私は今日、そんなことを考えていた。

カテゴリ: 農業

北海道・帯広にて

2011.05.22

今日は、北海道の帯広に来ている。明日、こちらで講演があるが、事前に帯広でお会いしたい人がいたので、1日早く帯広入りした。

お会いしたかったのは、サイパンの生き残りの元兵士(88)である。玉砕の戦場となったサイパンの戦いを生き抜き、昭和19年7月にサイパン守備隊が全滅した後、1年半も同地で抵抗を続けた元兵士である。

今年、封切りされた竹之内豊主演の「太平洋の奇跡―フォックスと呼ばれた男」もサイパンの戦いを描いた映画だったが、今日、お会いした元兵士も同島のまったく別の地で長期の抵抗を続けた人物である。

生々しい証言の連続に息を呑むシーンも少なくなかった。経験者でなければ語れない事実の「重さ」にいつもながら驚かされた。

夜は、某通信社の帯広支局長、そして地元の有力者の一人と食事をした。十勝地方の政治経済、あるいは大規模農業についていろいろと教えてもらった。本州の農業と、十勝の広大な大地を使った農業が根本的に異なることを具体的に知った。

いま日本では、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)によって国内農業が打撃を受けるという声が満ちているが、少なくともここ十勝地方の大規模農家はTPPをまったく恐れていなかった。むしろ「大歓迎」なのだそうだ。

これまで高い税金がかけられていた輸出入品の関税が撤廃されるTPPは、補助金と保護政策に胡坐(あぐら)をかいてきた農家こそ打撃を受けるが、経営努力と大規模化を展開してきた十勝の農家はまったく大丈夫だと、この有力者は語った。

これに反対しているのは、国の優遇政策にどっぷり漬かってきた農協関係の連中ばかりだとも言う。「農協は潰れるが、経営の効率化と大規模化を目指してきた競争力のある農家はむしろTPPを喜んでいますよ」と。

この有力者の話によれば、一時、廃れていた林業も復活の兆しがあるという。日本の林業に決定的な打撃を与えてきた外材の流入――しかし、ここ数年、地球温暖化などの環境問題を理由に世界的に「切る林業」から「育てる林業」に変わってきたため、外材の流入自体が少なくなり、十勝の林業も持ち直しつつあるという。

時代の変化に必死で対応しようとする地方の農林業のあり方は勉強になる。そこには、東京では聞けない地方の本音がある。日本の農業の本来のあり方と共に、今後のTPPの行方に注目していきたい。

カテゴリ: 歴史, 農業